AI半導体が複雑になるほど仕事が増える|アドバンテストのテスタ需要と将来性

個別株・企業考察

※この記事は2026.08.25に作成した記事になります

AI半導体と聞くと、GPUを設計・製造する会社へ目が向きますよね。アドバンテストはどちらでもなく、半導体へ電気信号を送り、狙った動きをするか確かめるテストシステムの会社。

地味に聞こえるかも。でもAI向け半導体は高価で構造も複雑。不良を残したまま後工程へ進めば、パッケージやメモリまで組み合わせた後で捨てるはめに。高性能になるほど「早いうちに確かめたい」が強くなるわけですね。

2027年3月期1Qの営業利益率は51.7%。驚くほど高い一方で、円安や一時的な押し上げも入り込む。すごい決算で終わらせず、どんな条件で伸び、どこから数字がほどけるのかまで見てみよう。

半導体を作る前でも後でもなく「検査の関所」にいる

主力はSoCテスタとメモリテスタ。SoCはCPU、GPU、AI向けASIC、通信用半導体など、計算や制御を担う半導体のまとまり。メモリ側はDRAMやNANDなど。

テスタは試験信号を入れ、返ってきた反応を高速で測る装置。検査は完成品へ一度だけではなく、ウェーハ上で選別し、パッケージ後にまた確認。複雑な製品では工程の途中にも増えていく流れ。

半導体の設計
   ↓
ウェーハ製造 ──→ ウェーハテスト
   ↓
先端パッケージ ─→ 工程途中のテスト
   ↓
完成品 ──────→ 最終テスト

複雑化すると「測る項目」「かかる時間」「検査する回数」が増える

売上を半導体の生産個数だけで考えると、少し足りないんですよね。3Dパッケージ化でテスト時間が延び、工程も増加。推論AI向けではCPUやカスタムASICの数量まで伸びているそう。

式へ落とすなら、こんな感じ。

テスタ需要
  ≒ 半導体の数量 × 1個あたりのテスト時間 × テスト工程数
                                      ÷ テスタ1台の処理能力

半導体が10%増え、1個を測る時間も工程数も増えれば、検査能力はそれ以上に欲しくなる。AI半導体そのものを作らなくても伸びる理由は、この掛け算なんですよね。

最新1Qは売上より利益の伸びが速かった

2027年3月期1Qは売上高3,675億円、営業利益1,900億円。前年同期比で売上39.3%増、営業利益53.3%増。売上総利益率69.5%、営業利益率51.7%と、装置会社というよりソフトウェア会社に近い採算です。

2027年3月期1Q実績前年同期比
売上高3,675億円+39.3%
売上総利益2,556億円+48.9%
営業利益1,900億円+53.3%
営業利益率51.7%+4.7pt
税引前利益2,341億円+92.9%
当期利益1,748億円+93.8%

テストシステム事業は売上3,336億円で全体の約91%。うちSoCテスタは2,596億円、メモリテスタは480億円。GPUやASIC、高性能DRAM向けが伸び、製品構成も利益率へ効いた形。

税引前利益と最終利益はもっと速く増えたものの、本業が急加速したわけではなさそう。戦略投資などの公正価値評価を中心に金融収益が約447億円。本業なら営業利益、株主へ最終的に残る金額なら当期利益。二つを同じ成長率として扱うと、景色が明るくなりすぎるかも。

通期予想は上げた。でも51.7%を平常値には置かない

通期予想も大幅な引き上げ。売上高は1兆4,200億円から1兆7,140億円へ、営業利益は6,275億円から8,460億円へ修正されました。前期比では売上51.9%増、営業利益69.5%増の予想。

2027年3月期の会社予想4月時点7月時点前期比
売上高1兆4,200億円1兆7,140億円+51.9%
営業利益6,275億円8,460億円+69.5%
営業利益率44.2%49.4%+5.2pt
当期利益4,655億円6,600億円+75.8%
研究開発費1,000億円1,100億円+40.8%
設備投資450億円500億円+45.8%

それでも下期の営業利益率予想は47.3%で、上期の51.7%より低め。1Qは製品構成と円安に加え、棚卸資産評価損の戻入れという繰り返さない効果もあり。テスタにはDRAMを多く使うため、メモリ価格の上昇は部材コストとして返ってきます。

51.7%は実績なので疑わなくてよさそう。でも今後の基準へそのまま置くのも違うかな。下期47.3%との間に、製品構成、為替、部材価格、一時効果の差が詰まっています。

為替の影響も大きめ。1Qは1ドル159円で前年同期より13円の円安でした。会社試算では、通期で1円の円安が営業利益を53億円押し上げる計算。海外売上比率は99.1%なので、円換算の追い風を少し外して眺めたいところ。

SoCテスタの66%シェアは、用途が広いところまで含めて強い

会社推定では2025年のSoCテスタ市場シェアは66%。将来は70%超への道筋があり、HPCだけなら全体より高いとの説明です。AI相場の人気に乗ったというより、すでに強い場所へ市場拡大が重なった形。

V93000はGPU専用ではなく、x86やARM、CPU、GPU、カスタムASIC、ネットワーク向けへ近い構成を使えます。勝つ半導体メーカーを一点で当てなくても、計算需要全体を取り込みやすい設計なんですよね。

良いところ決算へつながる理由追いたい数字
SoCテスタの高シェアAI・HPC市場の拡大を売上へ移しやすいSoCテスタ売上、市場シェア
複数用途で使える基盤GPU、CPU、ASIC間の需要移動を受け止めやすい用途別需要、顧客の設備増強
半導体の複雑化テスト時間と工程数が増えるテスト時間、テスト・インサーション
サービス事業納入した装置の保守需要が積み上がるサポート・サービス売上
高い利益率研究開発と増産へ回す余力がある粗利率、研究開発費

推論AIではCPU、カスタムASIC、ネットワーク、DRAMへ需要が分かれます。会社はカスタムASIC向けテスタが将来GPUと同等か、それ以上へ育つ可能性まで見込む。予測なので約束ではないものの、成長の入り口がGPU一枚ではない点は強みになりそう。

メモリテスタは、AI需要があっても楽勝ではない

強さばかり並べると見落とす部分もあります。メモリテスタは競争が厳しく、会社も今年のシェア低下を想定。NANDは従来から強かったわけではなく、高速化や帯域拡大で生まれる新しい検査工程も十分に取れていないそうです。

AIサーバーには高性能DRAMやHBMが必要なので、市場そのものは伸びそう。でも市場拡大と自社シェア上昇は別の話。競合へ多く流れれば、アドバンテストの売上は市場ほど伸びません。

新製品には顧客から一定の導入意向もあるそう。確認したいのは発表の数より、メモリテスタ売上とシェアがいつ底を打つか。SoCの強さに隠れないよう、内訳を一段細かく読みたいかな。

増産20倍は成長力であり、先回りの怖さでもある

SoCテスタの生産能力も急拡大中。2026年度末までに5,000台、2028年末から2029年初に1万台としていた計画を前倒ししています。現在の1万台は2020年型の約2万台分に相当し、実質約20倍の能力とのこと。

主要顧客や供給網とは、従来の6か月ではなく18か月先の需要見通しで協議中。ウェーハ製造や先端パッケージの増強まで見ながら、テスタを先に用意する流れです。

顧客の18か月需要見通し
       +
ウェーハ投入量・先端パッケージ能力
       +
新世代チップのテスト時間
              ↓
部材の長期契約・EMS工場・自社生産を増強
              ↓
需要どおりなら売上拡大
遅れれば在庫と能力バッファが先に残る

増産できず納期が延びれば需要を逃すので、先回りは合理的。一方で設計完了や特性評価が済むまで、顧客にも正確なテスト時間が読めない場合があります。18か月見えているから18か月分が確定、ではないんですよね。

6月末の棚卸資産は2,737億円で、3月末から419億円増えました。増産前の部材確保なら売上の準備。需要が後ろへずれれば在庫負担です。売上と一緒に棚卸資産、納期、能力の使われ方まで見たいところ。

弱点は「AIが失速するか」だけではない

リスクをAI投資の減速だけでまとめると、少し粗いかな。業績へ届くまでには何段かあります。

気になる材料何が起きるか決算で見える場所
先端パッケージの能力不足チップを作れても後工程が詰まり、テスタ導入がずれる売上時期、会社の市場見通し
メモリ供給の変動DRAM需要とテスタ需要がぶれ、装置部材も高くなるメモリテスタ売上、粗利率
コンピュート・通信への偏りFY26のSoC売上見通しの95%が同用途用途別売上、AI設備投資
台湾・中国への出荷集中地政学、規制、物流の影響を受けやすい地域別売上、中国比率
急速な能力増強需要が遅れると在庫や余剰能力が残る棚卸資産、設備投資、納期
円高円換算売上と営業利益を押し下げる為替感応度、現地通貨の需要

中国向け売上は約19%。台湾は最大の出荷先ですが、米国ファブレス向けが台湾へ届く分も含まれます。地域別売上と最終需要は同じではない。製造と後工程の地域集中には、規制や物流の影響も重なりそう。

投資有価証券と金融収益も気になります。6月末の投資有価証券は3,577億円で、3か月で2,898億円増加。戦略投資の取得や公正価値の上昇によるもので、評価が下がれば最終利益の振れも大きくなる。営業利益と純利益の差は毎回見たいかな。

将来性はある。でも見るべきはAIのニュースより検査量

将来性を強めるのは生産量だけではありません。3D化、チップレット、HBMとの組み合わせが進めば途中の検査も増える。推論AIではCPUやカスタムASICの数量も伸びる。数量と複雑さが同時に効くなら、テスタ市場の伸びは長くなりそうです。

2026年のSoC・メモリテスタ市場は、4月予想から中間値で約19%引き上げられ、130億〜145億ドルの見込み。SoCのシェアを保ち、メモリの弱い場所を新製品で埋められるなら、成長余地はまだありそう。

期待どおりの決算でも株価が上がるとは限りません。成長や利益率を株価が先に織り込めば、次は上方修正の大きさまで比べられる。良い会社かどうかと、今の値段で買いたいかは別にしておきたいですね。

会社予想EPSは911.64円。記事を読む時点の株価を入れれば予想PERが出せます。

予想PER = 現在の株価 ÷ 会社予想EPS 911.64円

同時に置く数字
・SoCテスタ市場の伸びとシェア
・営業利益率49.4%を保てる条件
・メモリテスタのシェア回復
・棚卸資産と生産能力の増え方

私なら次の決算で、まずSoCとメモリの売上を分けるかな。営業利益率の変化を製品構成、為替、DRAM価格、一時効果へ分解し、市場規模、増産、棚卸資産へつなぐ。AIという看板より、何時間分の検査が増えたかを追うイメージです。

アドバンテストは半導体の勝ち組を一社だけ当てるより、高性能化で検査が増える流れへ装置を置く会社。SoCのシェア、用途をまたげる基盤、高い利益率ははっきりした強み。その横にはメモリの競争、円高、部材高、増産の先回り、投資有価証券の値動きも並びます。

AI半導体が何個作られるか。何回、何分測るか。増やしたテスタがどれくらい埋まるか。三つを続けて見れば、強い数字に浮かれず、弱い数字へ早すぎる悲観もせずに追いやすくなりそう。

※本記事は2026年7月29日公表の2027年3月期第1四半期資料などを基にした記事です。特定銘柄の購入や売却を勧めるものではありません。公開前に最新のIRと株価をご確認ください。

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