ニュースやSNSを見ていると、「AIバブルが来ている」「次に弾けるのは不動産バブルだ」といった言葉をよく見かけます。
バブルと聞くと、「価格が急に上がり、そのあと暴落すること」というイメージがありますよね。ただ、値上がりしたものが全部バブルというわけではありません。企業の利益や資産の価値が伸び、それに合わせて価格が上がっている場合もあるからです。
では、普通の値上がりとバブルは何が違うのか。今回は「泡」という言葉の由来から、バブルが膨らむ流れや巻き込まれないための考え方まで見ていきます。
1.バブルは「価格が実態から離れて膨らんだ状態」
バブル(Bubble)は、英語で「泡」を意味します。
経済や投資では、株や不動産などの価格が、そこから期待できる利益や収入といった実態以上に膨らんだ状態をバブルと呼びます。
| 普通の値上がり | バブルの可能性がある値上がり |
|---|---|
| 業績や収入も伸びている | 価格ほど実態が伸びていない |
| 利益の成長を見て買われる | 値上がりを見て買われる |
| リスクや割高感も話題になる | 上がる理由ばかりが語られる |
| 長く保有する理由がある | 高く売ることが主な目的になる |
ここで間違えやすいのが、「中身のないものだけがバブルになる」という考えです。
本当に優れた企業や、世の中を変える技術でもバブルは起こります。技術が本物でも、期待が大きくなりすぎれば、価格だけが何年も先へ走ってしまうからです。
「この企業は成長する」と「今の株価で買っても儲かる」は、同じ話ではないんですよね。
2.なぜ「泡」と呼ばれるのか
泡は、空気を取り込みながら大きく膨らみます。見た目は大きくても、中に詰まっているものはほとんどありません。
市場のバブルも、少し似た形で膨らみます。
新しい技術や期待が生まれる
↓
価格が上がり始める
↓
値上がりが話題になる
↓
新しい買い手が増える
↓
さらに価格が上がる
↓
値上がり自体が買う理由になる
最初は企業や技術への期待で買われていたものが、途中から「上がっているから買う」に変わります。
さらに、「自分が高く買っても、次の人がもっと高く買ってくれる」と考える人が増えていきます。こうなると、価格を支えているのは企業の利益より、新しい買い手が現れるという期待です。
その買い手が減り始めると、今度は反対向きの流れが始まります。ただし、バブルが必ず一瞬で弾けるとは限りません。何年も高値が続いたり、時間をかけて少しずつしぼんだりすることもあります。
3.「バブル」という言葉を有名にした南海泡沫事件
経済用語としての「バブル」を有名にした代表的な出来事が、1720年にイギリスで起きた南海泡沫事件です。
南海会社は1711年に設立され、イギリス政府への貸し付けと引き換えに、スペインが支配していた南米地域との貿易権を得ました。ただ、当時はスペインとの関係もあり、期待されたほど貿易は広がりませんでした。
そこで南海会社が進めたのが、政府の債務と自社株を交換する計画です。国の借金を引き受ける大きな話への期待から株価が急上昇し、多くの人が参加しました。
ところが、その期待を支えられるほど事業が成長せず、株価はその後に急落します。大勢の投資家が損失を受け、熱狂が泡のように消えた出来事として「South Sea Bubble」と呼ばれるようになりました。
イングランド銀行は、この事件を同行の歴史上最初の金融危機として紹介しています。
南海泡沫事件を「世界初のバブル」と紹介する記事もありますが、それ以前にはオランダのチューリップ投機などもあり、何を最初とするかは定義によって変わります。「バブル」という言葉を広く印象づけた代表的な事件と考えるのが自然です。
4.ニュートンも熱狂に巻き込まれた?
南海泡沫事件では、万有引力で知られるアイザック・ニュートンも株を売買していたと伝えられています。
ニュートンは早い時期に一度売却して利益を得たものの、その後も上がり続ける株価を見て再び購入し、下落によって大きな損失を受けたという話です。
そこでよく紹介されるのが、次の言葉です。
天体の動きは計算できても、人々の狂気は計算できない。
この言葉はニュートンの発言として有名ですが、本人が直接書き残した記録ではなく、後年の伝聞によるものです。表現にもいくつか違いがあるため、「ニュートンの言葉として伝えられている」とする方が正確です。
それでも、一度は冷静に利益を確定した人が、周りの熱狂を見て再び買いたくなる話には妙な現実味があります。
投資の知識があることと、他人が儲かっている姿を見ても焦らないことは別なんですよね。
5.バブルは、正しい物語から始まることもある
バブルは、最初から全員が怪しい話を信じて始まるとは限りません。
インターネットは本当に社会を変えました。新しい技術が大きな市場を作ることもあります。不動産にも、住む場所や家賃収入という実際の価値があります。
最初の期待が正しくても、その後に価格が上がりすぎることがあるんです。
たとえば、将来大きく成長する企業でも、その成長を何十年分も先に織り込んだ価格で買えば、業績が少し期待を下回っただけで株価が大きく下がる可能性があります。
| 物語 | 投資で確認したいこと |
|---|---|
| この技術は世界を変える | 企業は実際に利益を出せる? |
| 市場が大きく成長する | 競争相手も増えない? |
| 売上が急成長している | 利益や現金も増えている? |
| 株価はもっと上がる | 今の価格を説明できる? |
物語が正しいからといって、どんな価格で買ってもいいわけではありません。未来を当てても、値段を間違えることはあるんです。
6.バブルが膨らんでいく流れ
バブルには、それぞれ違った事情があります。ただ、過去の事例を見ると似た流れもあります。
① 新しいテーマが登場する
新技術や制度変更、金融緩和など、価格が上がる理由が生まれます。この段階では、本当に価値のある変化かもしれません。
② 初期に買った人が大きく儲ける
値上がりによって成功者が現れ、その利益がニュースやSNSで広がります。「あの人が儲かったなら、自分もまだ間に合うかも」と参加者が増えます。
③ 値上がりが最大の材料になる
企業の利益や資産価値より、チャートの勢いが注目されます。慎重な意見は「時代遅れ」と言われ、買っていない人ほど焦り始めます。
④ 投資額と借り入れが増える
今まで投資をしていなかった人が参加し、信用取引などで持っている資金以上のお金が入ることもあります。上昇中は勢いが増しますが、下落時には強制的に売られる資金も増えます。
⑤ 買い手が減り、流れが反転する
何か大きな悪材料が出る場合もあれば、単に新しい買い手が減ったことで上昇が止まる場合もあります。値上がりを理由に買っていた人が売り始めると、今度は下落が下落を呼びます。
期待
↓
値上がり
↓
注目と新規参入
↓
過度な期待と借り入れ
↓
買い手の減少
↓
下落と強制売却
バブルを膨らませるのは「楽に儲けたい」という欲だけではありません。「自分だけ乗り遅れたくない」という焦りも、大きな燃料になります。
7.バブルは、弾けるまで分からないことも多い
バブルの歴史をあとから見ると、「どう考えても高すぎる」と感じます。
ところが、その時点で資産の適正価格を正確に計算するのは簡単ではありません。シカゴ連銀も、バブルの定義自体は説明できても、資産の本質的な価値を実際に推定することはかなり難しいとしています。
価格が2倍になっただけではバブルと断定できません。企業の利益も2倍以上に増える可能性があります。
PERが高いだけでも決められません。将来の成長が本当に大きければ、高い評価が正当化されることもあります。
だから、「これはバブルだ」と早い段階で売り、その後の上昇を何年も見続けることもあります。反対に、「今回は成長で説明できる」と思っていたら、急落する場合もあります。
バブルを見抜いて天井で逃げるという作戦は、思っているより難しいんですよね。
8.バブルかもしれないと感じたときの確認項目
価格が急上昇している商品を買いたくなったら、まず次の項目を確認してみます。
| 確認すること | 自分への質問 |
|---|---|
| 買う理由 | 値上がり以外の理由を説明できる? |
| 価格の根拠 | どんな成長を前提にした価格? |
| 情報源 | SNS以外の資料も確認した? |
| 投資額 | 半値になっても生活に影響しない? |
| 借り入れ | 信用取引やローンを使っていない? |
| 売却条件 | 何が変わったら手放す? |
個人的には、「価格が半年間まったく上がらなくても欲しいか」を考える方法が分かりやすいと思っています。
それでも欲しいなら、商品や企業そのものに投資したいのかもしれません。急に興味がなくなるなら、欲しかったのは資産ではなく、上がっているチャートだった可能性があります。
9.「出口を決めれば乗っても大丈夫」とは限らない
バブル相場では短期間に大きな利益が出ることもあるため、少し参加したくなる気持ちは分かります。
ただ、「下がり始めたらすぐ売る」と決めていても、その価格で売れるとは限りません。急落時には価格が飛んだり、売り注文が集中したりすることがあります。
多くの人が同じ出口を目指したとき、その出口は思っているより狭くなります。
そのため、出口を当てるより、出口に間に合わなくても困らない金額にしておく方が現実的です。
参加するなら生活費や長期積立の本隊とは分け、失っても将来の計画が崩れない範囲に抑えます。ホビー枠を作っても損失がなくなるわけではありませんが、失敗が資産全体へ広がるのは防ぎやすくなります。
まとめ:バブルかどうかより、自分が熱くなっていないか
バブルとは、資産価格が実態から大きく離れて膨らんだ状態です。ただ、その実態を正確に計算するのは難しいため、上昇中にバブルだと断定することは簡単ではありません。
だからこそ、「絶対にバブルだ」「今回は絶対に違う」と決めつけるより、自分の買い方を確認した方がよさそうです。
値上がりだけを理由に買おうとしていないか。他人の利益を見て焦っていないか。投資額を急に増やしていないか。借りたお金まで使おうとしていないか。
私は、価格が上がっていることより、それまで慎重だった自分が「今回は特別だから」と言い始めたときの方を警戒します。相場がバブルかどうかは分からなくても、自分が熱くなっていることなら気づけるかもしれないからです。
バブルの天井を当てる必要はありません。弾けた翌日も、いつも通り夕飯を食べられる金額にしておけばいいんですよね。
第21回:チェックポイント
- 急上昇しただけでバブルとは決めつけない
- 本物の企業や技術にもバブルは起こり得る
- 成長予想が正しくても、買う価格が高すぎる場合がある
- バブルをリアルタイムで見抜くのは難しい
- 値上がり以外の購入理由を確認する
- 信用取引や借り入れで熱狂を追わない
- 出口を当てるより、失っても困らない金額にする
- 「今回は特別」と考え始めた自分にも注意する
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