ワールドカップで儲かるのは誰? 104試合を支える7つの投資テーマ

投資哲学・メンタルラウンジ

2026年6月11日、史上最大のワールドカップが開幕しました。

出場国は32から48へ、試合数は64から104へ増加。開催地も米国、カナダ、メキシコの3カ国16都市にまたがります。FIFAは600万人超の現地観戦を見込んでいます。

ただし、「大会が盛り上がる企業」と「株主が儲かる企業」は同じではありません。スポンサー企業は広告費を払い、航空会社は燃料費を負担し、通信会社は設備投資を迫られます。売上が増えても、それ以上に費用が増えれば利益は残りません。

そこで今回は、ユニフォームやテレビだけではない、104試合の裏側で動く7つの投資テーマを考えます。

テーマ注目ポイント代表銘柄
決済越境決済Visa、MA
空港旅客増加PAC、OMAB
ホテル宿泊需要MAR、HLT、ABNB
通信データ通信VZ、LNVGY
仮設インフライベント設備URI、PWR
飲食観戦需要DASH、BUD
スポーツ用品ユニフォームADS、NKE

※銘柄情報は2026年6月13日時点です。本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

第1章 現金より先に国境を越える「決済」

海外から来た観客は、ホテル、飲食店、鉄道、タクシー、グッズ売り場で何度も決済します。ここで注目したいのは、何を買うかではなく、支払いのたびに通過するネットワークです。

中心になる銘柄は、FIFAのグローバルパートナーであるVisa(NYSE:V)です。

Visaはカードを発行して利用者にお金を貸す銀行ではありません。銀行と店舗の間に決済網を提供し、取扱高や取引件数に応じて収益を得ます。特に国外での利用は、国内決済より収益性が高くなりやすいため、3カ国を移動する大会との相性があります。

比較対象はMastercard(NYSE:MA)です。公式スポンサーではありませんが、一般店舗でMastercardが使えなくなるわけではありません。富裕層の旅行消費という点では、カード発行と決済ネットワークを自社で持つAmerican Express(NYSE:AXP)も候補になります。

個人的には、ワールドカップ銘柄と聞いて最初に飲料メーカーを挙げるより、「観客がビールを買っても、シャツを買っても、最後に通る場所はどこか」と考える方が投資らしいと思います。

ただし、104試合で生じる決済額は、VisaやMastercardの世界全体の取扱高から見れば小規模です。大会単独で業績が変わるというより、国際旅行とキャッシュレス化という長期テーマを確認する材料です。

注目銘柄

  • Visa(V):FIFA公式パートナー。越境決済が焦点です。
  • Mastercard(MA):公式スポンサーではないものの、世界的な決済網を持ちます。
  • American Express(AXP):旅行・娯楽分野に強いカード会社です。

第2章 航空会社より面白い? 「空港」という料金所

今回の大会で特徴的なのは、開催地間の距離です。ニューヨークからロサンゼルスまでは約4,000キロ。国境をまたいだ移動も発生します。

FIFAの北米公式航空会社はAmerican Airlines Group(NASDAQ:AAL)です。同社は開催都市へ1日2,200便以上を運航すると説明しており、拠点のダラスも開催地です。

しかし、航空会社には燃料、人件費、整備費、機材費がかかります。搭乗率が上がっても、増便や混雑対応で費用が膨らむ可能性があります。「観客が増えるから航空株」という考え方は、見た目ほど単純ではありません。

そこで一段ずらして見たいのが空港運営会社です。

メキシコのGrupo Aeroportuario del Pacífico(NYSE:PAC)はグアダラハラ空港などを運営します。Grupo Aeroportuario del Centro Norte(NASDAQ:OMAB)は開催地モンテレイの空港を持ちます。

空港会社は旅客施設使用料、店舗賃料、駐車場などから収益を得ます。どの航空会社が勝つかを当てなくても、旅客が空港を通れば恩恵を受けられる構造です。

一方、入国規制、治安への懸念、航空運賃の高騰などで海外客が想定を下回る可能性があります。空港株には為替や各国の規制リスクもあります。

注目銘柄

  • American Airlines Group(AAL):公式航空会社ですが、利益率の変動が大きい銘柄です。
  • United Airlines Holdings(UAL):米国内の開催都市を広く結びます。
  • Grupo Aeroportuario del Pacífico(PAC):グアダラハラ空港などを運営します。
  • Grupo Aeroportuario del Centro Norte(OMAB):モンテレイ空港を運営します。

第3章 ホテル不足を収益に変える「部屋を持ちすぎない会社」

宿泊需要で注目されるのはMarriott International(NASDAQ:MAR)です。Marriott Bonvoyは北米の公式ホテルサポーターで、3カ国すべての開催都市に施設を展開しています。

ポイントは、マリオットがすべてのホテルを自社所有しているわけではないことです。ブランドや予約網を提供し、運営・フランチャイズ料金を得る資産の軽い事業モデルを採用しています。

同様の構造を持つHilton Worldwide Holdings(NYSE:HLT)も比較対象です。

ホテルの供給が不足する都市では、Airbnb(NASDAQ:ABNB)も受け皿になります。Airbnbは北米地域の大会サポーターであり、ホテルを建設しなくても、個人が持つ住宅を宿泊在庫として追加できます。

私は旅行先を選ぶとき、宿泊料金を見てから予定そのものを考え直すことがあります。サポーターが同じ行動を取れば、値上がりは宿泊会社の追い風であると同時に、需要を壊す原因にもなります。

見るべき数字は、予約件数だけではありません。客室単価、稼働率、予約総額、手数料率、そして大会終了後の反動です。

注目銘柄

  • Marriott International(MAR):公式ホテルサポーター。会員基盤も強みです。
  • Hilton Worldwide Holdings(HLT):資産の軽いホテル運営モデルを持ちます。
  • Airbnb(ABNB):開催都市の宿泊不足を既存住宅で補える企業です。
  • Booking Holdings(BKNG):ホテル、航空券、レンタカーを横断して扱います。

第4章 ゴール映像を止めない「通信・データ処理」

スタジアムでは数万人が同時に写真や動画を送ります。メディアは高精細映像を伝送し、大会運営側は入場管理、データ分析、セキュリティを動かします。

公式通信スポンサーのVerizon Communications(NYSE:VZ)は、スタジアムや大会施設の接続環境を担います。海外客向けに、到着後すぐ利用できる通信サービスも展開します。

技術面では、公式テクノロジーパートナーのLenovo Group(香港:0992、米国ADR:LNVGY)が、端末、サーバー、データセンター、AI関連技術を提供します。

放映では、米国英語圏の権利を持つFox Corporation(NASDAQ:FOXA/FOX)、スペイン語圏を担うNBCUniversalの親会社Comcast(NASDAQ:CMCSA)が広告需要を取り込みます。

104試合への拡大は、販売できる広告枠が増えることを意味します。ただし、不人気カードにも制作費はかかります。試合数が増えれば、1試合当たりの希少性が薄れる可能性もあります。

通信株についても、大会中のデータ利用増加より、整備した設備を大会後にどう収益化するかが重要です。

注目銘柄

  • Verizon Communications(VZ):大会公式通信スポンサーです。
  • Lenovo Group(0992/LNVGY):端末からサーバーまで提供します。
  • Fox Corporation(FOXA/FOX):米国での英語放映権を持ちます。
  • Comcast(CMCSA):NBCUniversalを通じて米国スペイン語放送を担います。

第5章 スタジアムの外で稼働する「仮設インフラ」

巨大イベントに必要なのは、完成したスタジアムだけではありません。

仮設照明、発電機、空調、通信設備、荷役機械、観客誘導設備などを短期間だけ増設する必要があります。ここでは、大会スポンサーに名前が出ない会社にも仕事が発生します。

代表例が機械レンタル大手のUnited Rentals(NYSE:URI)です。建設機械や発電・空調関連設備を必要な期間だけ貸し出します。大会後に不要となる設備を開催都市が買い切らずに済むため、レンタルという仕組み自体に合理性があります。

電力設備ではEaton(NYSE:ETN)、インフラ工事ではQuanta Services(NYSE:PWR)が候補です。Quanta Servicesはヒューストン開催組織の支援企業でもあります。

とはいえ、大会案件がこれらの巨大企業の業績を大きく動かすとは限りません。注目すべきなのはワールドカップそのものより、データセンター、送電網、イベント設備更新などと需要が重なるかどうかです。

注目銘柄

  • United Rentals(URI):仮設設備や建設機械のレンタル大手です。
  • Eaton(ETN):配電、電力管理、バックアップ設備を手掛けます。
  • Quanta Services(PWR):送電・通信インフラ工事に強みがあります。
  • NRG Energy(NRG):電力需要増加を見る際の関連候補です。

第6章 試合開始直前に膨らむ「飲食・ラストワンマイル」

自宅観戦では、キックオフ直前に注文が集中します。その需要を狙うのが、大会公式サポーターのDoorDash(NASDAQ:DASH)です。

DoorDashは配達だけでなく、店頭受け取りやレストラン予約へ領域を広げています。ワールドカップは、新規利用者の獲得と複数サービスの利用を促す広告機会になります。

飲料では、公式ビールスポンサーのAnheuser-Busch InBev(NYSE:BUD)が本命です。Budweiserだけでなく、開催国に合わせた複数ブランドを展開できる点が強みです。

食品ではLay’sを持つPepsiCo(NASDAQ:PEP)、外食では公式スポンサーのMcDonald’s(NYSE:MCD)が関連します。

ただし、この章で一番警戒したいのは販促費です。割引クーポンや広告を大量投入して注文が増えても、顧客獲得費用が高ければ利益は残りません。ビールも販売数量だけでなく、原材料費、物流費、広告費を含めて見る必要があります。

注目銘柄

  • DoorDash(DASH):配達、受け取り、予約をまとめるプラットフォームです。
  • Anheuser-Busch InBev(BUD):大会公式ビールスポンサーです。
  • PepsiCo(PEP):Lay’sを通じて大会スポンサーになっています。
  • McDonald’s(MCD):世界的な店舗網を持つ公式スポンサーです。

第7章 優勝国より難しい「ユニフォーム戦争」

最後はスポーツ用品です。ただし、「活躍した国のユニフォームが売れる」で終わらせると、投資記事としては物足りません。

公式パートナーのadidas(フランクフルト:ADS、米国ADR:ADDYY)は、試合球の提供に加え、複数代表チームと契約しています。対するNike(NYSE:NKE)も、有力代表のユニフォームを供給します。Puma(フランクフルト:PUM、米国ADR:PUMSY)は規模で劣るものの、契約チームの躍進がブランド露出に与える影響は相対的に大きくなります。

ここで面白いのは、必ずしも優勝チームのメーカーだけが勝者ではないことです。人口の多い国、久しぶりに出場した国、スター選手を持つ国が勝ち進めば、大きな販売機会になります。

私自身、この分野では「どの国が勝つか」より、「メーカーが大会後も定価で売れるブランドを作れるか」を重視したいと思います。大会前に大量生産した商品が売れ残れば、値引きと在庫処分が利益を圧迫するからです。

確認したいのは売上高だけでなく、粗利益率、在庫、値引き率、直販比率です。テレビへの露出は無料でも、売れ残ったユニフォームは無料ではありません。

注目銘柄

  • adidas(ADS/ADDYY):FIFA公式パートナーで、試合球も供給します。
  • Nike(NKE):有力代表との契約と世界的な直販網を持ちます。
  • Puma(PUM/PUMSY):契約チームの活躍による業績感応度が比較的大きい企業です。

私的に注目ランキング

テーマ注目度
決済★★★★★
空港★★★★★
ホテル★★★★☆
通信★★★☆☆
仮設インフラ★★★☆☆
飲食★★★☆☆
スポーツ用品★★☆☆☆
これは大会期間中の売上増加だけでなく、大会後も顧客や設備を収益に変えられるかという、私自身の関心を含めた順位です。

結論 狙うべきは歓声ではなく「通過点」

ワールドカップから投資を考えるとき、目立つスポンサーだけを見る必要はありません。

観客が国境を越えれば決済網を通り、飛行機を降りれば空港を通ります。宿泊し、通信し、注文し、試合映像を視聴します。つまり、勝敗にかかわらず利用される「通過点」を探すことが重要です。

観客来場

空港

決済

ホテル

通信

飲食

グッズ

一方、大会は39日間で終わります。短期的な売上増加だけで企業価値を判断すると、大会後の反動や広告費、設備投資を見落とします。

私がこの7テーマの中で特に興味を持つのは、決済、空港、ホテル予約です。特定の国の勝利を当てなくても、ファンが動き、お金を使うことで収益が生まれるからです。

ピッチ上の勝者は7月19日に決まります。しかし、投資の勝者を決めるのは得点数ではありません。104試合で集めた顧客を、大会が終わった後も収益に変えられるかどうかです。


※本記事は特定銘柄の購入推奨ではありません。紹介したデータや戦略は一つの強力な指標として参考にし、投資判断はご自身のリスク許容度に応じて行ってください。

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