NISAで買った株、寝かせておくなら貸せばよくない?
成長投資枠で国内株を買って、そのまま長期保有。売る予定はしばらくない。
そんな時に貸株サービスを見ると「持っているだけで金利が入るなら、使わないともったいないかも」と思いますよね。配当はNISAで非課税、さらに貸株金利も受け取れるなら、たしかにおいしそう。
でも主要証券会社のルールを確認すると、NISA口座で保有する株は貸株の対象外。SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券はいずれも、NISA残高を貸株へ出せないという案内です。
つまり「NISAの非課税を残したまま、同じ株で貸株金利も受け取る」という組み合わせは、少なくともこの4社では使えないんですよね。
話が終わりそうですが、実際に迷うのはその先だったりします。
「じゃあ高い貸株金利がつく銘柄は、あえて課税口座で買った方が得?」
たぶん気になるのはこっち。貸株金利だけなら課税口座が有利。でも配当の税金や株主優待、株を貸すことで増えるリスクまで入れると、答えは変わってきます。
最初に口座と受け取るお金を分ける
貸株の話は、似た言葉が並ぶので混ざりやすいんですよね。まずは三つに分けます。
| 受け取るお金 | 何のお金か | 税務上の扱いの基本 |
|---|---|---|
| 配当金 | 株主として会社から受け取る | 配当所得。NISAでは条件を満たせば非課税 |
| 貸株金利 | 証券会社へ株を貸した対価 | 雑所得として総合課税の対象 |
| 配当金相当額 | 貸出中で配当を受け取れない代わりの金銭 | 雑所得。配当控除や株式譲渡損との通算対象外 |
NISAの非課税対象になるのは、NISA口座で保有する株の売却益や配当・分配金。貸株金利までNISA制度が非課税にしてくれるわけではないんです。
とはいえNISA株自体が貸出対象外なら、NISA口座内で貸株金利の税金を心配する場面も通常はなし。課税口座で貸株を使う時の話として分けると、だいぶすっきりします。
NISA口座の株
├─ 値上がり益 → 非課税
├─ 配当金 → 受取方式を満たせば非課税
└─ 貸株 → 主要証券会社では対象外
課税口座の株
├─ 値上がり益 → 原則課税
├─ 配当金 → 原則課税
└─ 貸株金利 → 雑所得
「NISAだから配当は全部非課税」にも条件がある
国内上場株式の配当をNISAで非課税にするには、受取方法を株式数比例配分方式にしておく必要があります。証券会社の口座で、保有株数に応じて配当を受け取る方法ですね。
銀行口座へ振り込む登録配当金受領口座方式や、銘柄ごとに受取先を指定する個別銘柄指定方式、配当金領収証方式では、NISAで買った株でも配当は課税対象。口座がNISAなら自動的に全部非課税、ではないんですよね。
貸株を使えないから安心、ではなく、配当の受取方式は別に確認が必要。以前の記事で詳しく扱った部分ですが、今回の比較でも手取りを左右します。
| 保有方法 | 売却益 | 国内株の配当 | 貸株金利 |
|---|---|---|---|
| NISA口座 | 非課税 | 株式数比例配分方式なら非課税 | 主要証券会社では利用不可 |
| 特定・一般口座、貸株なし | 原則課税 | 原則20.315%課税 | なし |
| 特定・一般口座、貸株あり | 原則課税 | 設定により配当金または配当金相当額 | 雑所得 |
100万円分の株で、どれくらい差が出る?
数字を置いてみましょう。株価の値動きは同じとして、次の条件で比べます。
- 投資額は100万円
- 年間配当利回りは3%
- 貸株金利は年0.1%
- NISAの配当は株式数比例配分方式で受け取る
- 課税口座の配当には20.315%の税率を単純適用
- 売買手数料、住民税を含む雑所得の追加負担、株価変動は比較外
NISA口座で保有する場合
年間配当は3万円。条件を満たせば全額を非課税で受け取り、貸株金利はなし。
配当 30,000円
税金 0円
手取り 30,000円
課税口座で保有し、配当時は株を返却する場合
配当3万円から税金約6,095円が引かれ、手取りは約2万3,905円。貸株金利は100万円×0.1%で年1,000円。こちらは雑所得になります。
税引前の合計は約2万4,905円。貸株金利にかかる最終的な税負担は、その人のほかの所得や確定申告の要否で変わります。
| 比較 | NISA保有 | 課税口座+貸株 |
|---|---|---|
| 配当の額面 | 30,000円 | 30,000円 |
| 配当への税金 | 0円 | 約6,095円 |
| 貸株金利 | 0円 | 1,000円(税引前) |
| 受取額の単純合計 | 30,000円 | 約24,905円 |
| 差 | – | NISAより約5,095円少ない |
0.1%の貸株金利では、3%配当の非課税メリットを埋められず。この条件なら、貸株金利を受け取るために課税口座を選ぶ計算にはなりにくそう。
もちろん貸株金利が5%や10%の銘柄なら、数字が逆転することも。でも高い金利には「その株を借りたい需要が強い」という背景があります。将来も同じ金利とは限らず、株価の下落リスクが小さくなるわけでもないんですよね。
年率だけを見ると5%は大きい。でも株価が20%下がれば、100万円に対する含み損は20万円。金利5万円で全部は埋まらない。貸株金利と企業価値の判断は、別の財布に入れておきたいところです。
配当金と配当金相当額は、名前が似ていても別物
課税口座で株を貸したまま権利確定日をまたぐと、本来の配当金ではなく配当金相当額になる場合があります。
金額は配当の税引後相当なので「受け取れるなら同じでは?」と感じますよね。でも税務上は配当所得ではなく雑所得。配当控除は使えず、上場株式の譲渡損失との損益通算もなし。
証券会社によっては、配当や優待の権利確定日に株を自動返却するサービスがあります。自動返却がきちんと行われれば、株主として配当を受け取る形へ戻せる。ただし設定名、締切、対象銘柄、返却できなかった時の扱いは会社ごとに違います。
| 権利確定日の状態 | 受け取るもの | 注意点 |
|---|---|---|
| 株を自分名義へ返却済み | 配当金 | 課税口座なら通常の配当課税 |
| 貸出中のまま | 配当金相当額 | 雑所得、配当控除なし、株式損失と通算不可 |
| 自動返却を設定 | 配当金を受け取れる場合あり | 対象外銘柄や返却不能時の扱いを確認 |
「配当と同じくらいのお金が入る」と「配当として受け取る」は同じではないんですよね。年間取引報告書だけで完結しない所得が増えることもあるので、金額が小さくても記録は残しておきたいところ。
株主優待は自動取得設定だけでは拾えないことがある
株を貸すと名義が移るため、原則として株主優待や議決権は取得できません。優待権利自動取得サービスを使えば、権利日に株を返してもらえる場合も。
便利ですが、万能ではないんですよね。優待情報の更新が間に合わない、権利確定日が明示されていない、随時実施される、長期保有の判定方法が会社ごとに違う。自動サービスからこぼれる場面もあります。
特に注意したいのが長期保有優待。株主番号の継続や、複数回の株主名簿への記載を条件にする会社もあります。権利日だけ戻せば必ず長期認定、とは限らないところ。
優待が年2,000円、貸株金利が年500円なら、金利のために優待条件を失うのは割に合わないかも。金額だけでなく、その優待を実際に使うかも含めて比べる方が現実的です。
貸株には「株を預けている時」と違うリスクがある
通常、証券会社が預かる顧客資産は分別管理の対象。貸株では、株式を証券会社へ貸し出す消費貸借契約になるため、貸出中の株は分別管理から外れます。証券会社が破綻した場合、投資者保護基金の補償対象にならないと案内する会社も。
これは「証券会社が危ないから貸株を使うな」という話ではなく、年0.1%や1%の金利を受け取る代わりに、契約上の立場がどう変わるかを知っておこうという話。
NISAで普通に保有する株と、貸株中の株は、同じ銘柄でも置かれ方が違うんですよね。
通常の預り
自分の資産として分別管理
貸株中
証券会社へ株を貸す契約
金利を受け取る代わりに信用リスクを負う
貸株金利を利回りへ足す時は、定期預金の上乗せ金利のように扱わない方がいいかな。株価リスクに加えて、契約と税務の手間が増える対価です。
NISAから課税口座へ移して貸株するのはどう?
NISA口座から課税口座へ株を払い出せば、その後に貸株対象となる可能性はあります。でもNISAへそのまま戻すことはできず、同じ株をNISAで持ち直すなら、いったん売買する形。新たな年間投資枠も使用。
払出しだけでは、その年に使った年間投資枠は戻りません。非課税保有限度額の再利用も、売却と同じ感覚で即時に起きるわけではない。証券会社の手続きや取得価額の扱いも確認したい部分です。
貸株金利を受け取りたいから課税口座へ移す、はかなり大きな交換。非課税の売却益と配当を手放してまで得る金利はいくらか。先ほどのように年額へ直すと、勢いでは動かしにくくなります。
高金利銘柄ほど、金利が続く前提を置かない
貸株金利は固定ではなく、銘柄ごとの需給で見直されます。今月5%でも、翌月に1%や0.1%へ下がることは十分あり得る話。
その一方で「高金利だから課税口座で買った」という判断だけは残る。金利が下がった時、企業そのものを持ち続けたい理由がなければ、口座選びより前に銘柄選びが崩れています。
高い貸株金利は、買う理由ではなく保有中に確認する条件くらいがちょうどいいかもね。
| 確認したいこと | 見る数字・資料 |
|---|---|
| 金利はどれくらい続いているか | 証券会社の金利履歴、変更頻度 |
| 配当の非課税メリットはいくらか | 年間配当×20.315% |
| 優待を失う可能性はあるか | 権利日、長期認定条件、自動返却対象 |
| 雑所得はいくらになるか | 貸株金利、配当金相当額、年間入金明細 |
| 株価下落に耐えられるか | 金利ではなく保有額と最大損失 |
| 貸株をやめても持ちたいか | 業績、価格、保有目的 |
NISAと貸株で迷った時の比較メモ
実際に比べるなら、次の表だけ埋めれば十分。税率や申告の扱いは人によって変わるので、分からない欄は証券会社や税務署へ確認する前提で空けておきます。
| 比較項目 | NISAで保有 | 課税口座+貸株 |
|---|---|---|
| 投資額 | ||
| 年間配当見込み | ||
| 配当への税金 | ||
| 年間貸株金利見込み | 対象外 | |
| 貸株金利等への税金 | 対象外 | |
| 株主優待の価値 | ||
| 長期保有条件への影響 | ||
| 確定申告・記録の手間 | ||
| 信用リスク | 通常の預り | 貸株契約を確認 |
| 1年後の手取り見込み |
大事なのは、貸株金利の年率だけを右側へ書かないこと。配当税、優待、雑所得、金利変更を一緒に置く。そうすると0.1%のためにNISAの非課税を手放すのか、判断しやすくなります。
貸株を使うなら、口座全体の自動設定も確認
証券会社によっては、貸株サービスへ申し込むと課税口座の対象株を自動で貸し出す設定があります。NISA残高は対象外でも、特定口座にある同じ銘柄は貸出中かも。
「NISA株は貸していないから大丈夫」と思っていたのに、課税口座分だけ優待の長期判定へ影響する。そんなズレは避けたいところ。
確認する順番は、このくらいで十分。
- 貸株サービスの対象口座を見る
- 自動貸出がオンか確認する
- 配当優先・優待優先・金利優先の設定を見る
- 長期保有優待のある銘柄は個別設定を確認する
- 毎年の貸株金利と配当金相当額を記録する
設定名は証券会社によって違うもの。画面の「優待優先」という言葉だけで安心せず、配当も返却対象か、随時優待や長期認定まで保証するのかを説明ページで見ておきたいですね。
NISA株を貸せないのは、必ずしも損ではない
持っている株から追加収入が出るなら、貸株は魅力的。でもNISA株が貸株対象外だからといって、何も生んでいないわけではないんですよね。
売却益と配当の非課税。手続きが少ないこと。配当金相当額や雑所得を管理しなくてよいこと。分別管理された通常の預りであること。これらも保有中に受け取っている価値。
貸株金利は画面に数字で出るので目立つもの。非課税になった税金や、増えなかった手間は画面に出にくい。見える収益だけで比べると、NISA側が何もしていないように感じてしまうんですよね。
NISAで長く持ちたい株なら、まず非課税メリットを年額で確認。課税口座の株で貸株を使うなら、金利、配当、優待、契約リスクをまとめて確認。この二つを混ぜないくらいが、ちょうどよさそうです。
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