【第14回】含み損がつらい理由と正しい向き合い方

初心者向け講座

「アプリを開くのが嫌になってきた……」「仕事中も、あの赤いマイナスが頭から離れない」

投資をしていると、どうしても出会うのが含み損。

買った直後から下がると、

「なんで今買ったんだろう」「もう戻らないかもしれない」「自分には投資のセンスがないのかな」

みたいなことまで考えてしまうんだよね。

でも、含み損がつらいのは、お金が減ったからだけじゃない。

自分の判断、将来への期待、これからの計画。

そういうものまで、一緒に否定されたような気持ちになるからだと思う。

今回は「気にするな」で終わらせず、含み損を見たときに何を確認すればいいのか、ゆるく整理してみようかな。


そもそも含み損って何?

含み損は、今売った場合に出る損失のこと。

100万円で買った商品が、現在80万円になっているなら、含み損は20万円。

買った金額 100万円
現在の価値  80万円
含み損    20万円

まだ売っていないので、税務上の損失は確定していない。

でも、「売っていないから何も減っていない」と考えるのも少し違うんだよね。

今の市場価値が80万円になっていることは事実。

そのまま回復するかもしれないし、さらに下がるかもしれない。

だから含み損は、まだ確定していないけど、無視もできない途中の数字くらいに考えるとよさそう。


含み損がつらいのは、数字だけの問題じゃない

たとえば、同じ10万円の含み損でも感じ方は人によって違う。

余裕資金で投資している人なら「まあ、しばらく待つか」で済むかもしれない。

一方、来月使う予定だったお金なら、かなり焦る。

つまり、含み損のつらさは金額だけでは決まらないんだよね。

つらさを左右するものたとえば
損失額1万円か、100万円か
保有割合資産の5%か、80%か
使う時期20年後か、来月か
商品の中身分散投信か、個別株か
買った理由長期保有か、短期売買か
生活の余裕現金があるか、ないか

含み損に耐えられないから心が弱いという、そんな単純な話ではない。

もしかすると、金額や商品が自分の生活に合っていないだけかもしれないね。


「自分の判断が間違っていた」と感じるから苦しい

自分で調べて、これなら上がりそうだと思って買った。

その直後に下がる。

すると、資産が減ったこと以上に「自分の考えを市場に否定された」ように感じることがある。

株価が下がる
      ↓
買った判断を疑う
      ↓
自分の投資能力まで疑う
      ↓
もっと不安になる

でも、買ったあとに下がったことと、買った判断が完全に間違っていたことは同じではない。

短期的な値動きかもしれない。

相場全体が下がっているだけかもしれない。

一方で、買ったときの前提が本当に崩れている可能性もある。

だから、赤い数字だけを見て自分を採点するのではなく、何が原因で下がっているのかへ戻ったほうがいいんだよね。

投資口座は、自分の人間性を採点する通知表じゃないからね。


なぜ損は、利益より気になるのか

人は、同じくらいの利益と損失を、同じ重さで感じるとは限らない。

1万円増えた喜びより、1万円減った痛みのほうが強く残れることがある。

こうした判断の傾向を考える代表的な枠組みが、カーネマンとトベルスキーのプロスペクト理論。Kahneman & Tversky(1979)

「損は必ず利益の2倍つらい」と全員へ当てはめるのは少し強すぎる。

感じ方は人や状況によって変わる。

ここで覚えておきたいのは、人は損失を冷静な数字だけで見にくいということかな?

損失を避けたい気持ちが強くなると、必要な損切りが遅れたり、反対に怖くなって底付近で全部売ったりすることがある。

だから感情をなくすのではなくて、損失を避けたい気持ちに引っ張られているかもと気づくだけでも違うんだよね。


買値に戻るまで売りたくない

100万円で買った商品が80万円になった。

このとき、せめて100万円へ戻ってから売りたいと思いやすい。

気持ちはすごく分かる。分かりみが深い。

でも、市場は自分の買値を知らない。

100万円で買ったことは、自分にとっては大きな意味がある。

でも、その商品の今後の価値とは別の話なんだよね。

自分の気持ち
「100万円へ戻ってほしい」

市場
「あなたの買値は知らない」

投資家には、利益が出ている商品を早く売り、損失が出ている商品を長く持ちやすい傾向があることも研究されている。いわゆるディスポジション効果だね。Shefrin & Statman(1985)

ただ、含み損の商品を持ち続けたら全部ダメ、という意味ではない。

大事なのは、買値へ戻ってほしいから持つのか、今も保有する理由があるから持つのかを分けることだね。

ここがごちゃっとすると、願望で保有しやすくなる。


都合のいい情報だけ集めたくなる

含み損になると、その商品を褒めている情報を探したくなる。

「この株は絶対に戻る」「今は仕込み時」「機関投資家が集めている」

そんな投稿を見つけると、少し安心するよね。

反対に、

  • 業績が悪化している
  • 財務に不安がある
  • 競争力が落ちている
  • 買ったときのシナリオが崩れている

こうした情報は、見たくなくなる。

でも、含み損のときこそ、自分と反対の意見も一度見たほうがいい。

「売りたいから悪材料を探す」「持ちたいから好材料を探す」

どちらかに寄せるのではなく、最初の投資理由が今も残っているかを確認する。

ここへ戻れると、少し落ち着きやすい。


「含み損は途中経過だから大丈夫」とは限らない

インデックス投資では、値下がりが長期運用の途中で起きることはある。

すべての含み損を「まだ売っていないから大丈夫」「いつか戻る」

で済ませるのは危ない。

分散された株式指数と、ひとつの企業の株では事情が違う。

保有しているもの主に確認したいこと
分散型インデックス目的、運用期間、株式比率
個別株業績、財務、競争力、購入理由
テーマ型商品テーマの持続性、集中度
レバレッジ商品商品構造、期限、損失許容額

世界中の企業へ分散された投資信託が、相場全体の下落で値下がりしている。

それなら、長期計画や資産配分が変わっていなければ、積立を続ける判断もある。

一方、個別企業で不正会計が発覚した、業績が大きく崩れた、借金の返済が難しくなった。

そんな場合は「含み損は途中だから」と待つだけでは済まないかもしれない。

含み損への対処は、商品ごとに変わるんだよね。


まず「価格」と「投資の前提」を分ける

含み損を見ると、何%下がった?ばかり気になる。

でも、その前に確認したいことがある。

買った理由は、今も残っている?

たとえば個別株なら、

  • 売上や利益は想定どおりか
  • 財務は悪化していないか
  • 競争力は残っているか
  • 経営方針に大きな変化はないか
  • 買ったときのシナリオは崩れていないか

価格だけ下がり、前提は変わっていない。

それなら、少なくとも「下がったから」という理由だけで慌てなくてもいいかもしれない。

反対に、価格は少ししか下がっていなくても、前提が崩れているなら見直したほうがいい。

価格が下がった
      ↓
すぐ売る・ただ待つ
ではなく
      ↓
買った前提を確認する
      ↓
前提が残る → 保有を再検討
前提が崩れた→ 売却を再検討

「保有を再検討」としたのは、前提が残っていれば必ず持つ、という意味ではないから。

使う予定のお金だったり、持ちすぎだったりすれば、前提が残っていても減らす判断はあるよね。


投資する前に決めたい3つのこと

含み損になってからルールを作ると、どうしても今の金額に引っ張られる。

だから、できれば買う前に決めておきたい。

なぜ買うのか

長期の資産形成なのか。

短期的な値上がりを狙うのか。

配当が目的なのか。

ここが曖昧だと、下がったときも判断できない。

何が起きたら見直すのか

何%下がったら売る、だけではなく、

  • 業績予想が崩れた
  • 想定していた成長が止まった
  • 保有割合が大きくなりすぎた
  • 必要な時期が近づいた

こんな条件も決めておく。

いくらまで持つのか

同じ商品でも、1万円持つのと100万円持つのでは、感じる怖さが違う。

だから銘柄選びと同じくらい、金額も大事なんだよね。


ポジションが大きいと、判断より感情が先に動く

たとえば、投資資産が100万円あるとする。

ひとつの商品へ5万円入れた場合と、50万円入れた場合を比べてみる。

その商品が30%下がると、

投資額含み損
5万円1万5,000円
50万円15万円

同じ30%下落でも、気持ちはかなり違う。

含み損が苦しくて、仕事や睡眠にまで影響している。

そんなときは、自分のメンタルが弱いのではなく、ポジションが大きすぎる可能性がある。

私は、含み損に耐える訓練をするより、普通に暮らせる大きさまで減らすほうがいいと思っている。

投資は我慢大会ではないからね。


損切りラインは、全商品で同じにしなくていい

「10%下がったら必ず損切り」

こんなルールを見かけることがある。

分かりやすいけど、すべての商品へ同じように使えるとは限らない。

長期で積み立てる分散型インデックスを、10%下がるたびに売っていたら、長期投資とは合わなくなる。

一方、短期売買や値動きの大きな個別株なら、事前に損失上限を決める意味は大きい。

投資方法ルールの例
長期インデックス期間、積立額、株式比率を確認
個別株の長期投資投資理由が崩れたら見直す
短期売買価格や損失額で撤退条件を決める
レバレッジ商品上限額と撤退条件を厳しく決める

大切なのは「何%なら正解」という共通ルールを探すことではない。

自分の投資方法に合ったルールを、買う前に作っておくことなんだよね。


どうしてもつらいなら、画面から離れていい

ルールを作っても、含み損がつらい日はある。

そんなとき、無理に冷静な投資家を演じなくてもいい。

アプリを閉じる。

通知を切る。

確認する日を週1回にする。

一晩寝てから考える。

これだけでも違う。

ただし、「見ない」と「悪材料を無視する」は別。

決算や運用報告書など、必要な確認日だけ決めておく。

毎日、何度も確認
→ 感情が揺れやすい

確認日を決める
→ 必要な情報だけ見る

距離を置くのは、現実逃避ではない。

その場の感情で余計な売買をしないための時間なんだよね。


含み損を見たら使いたい5分チェック

アプリを開いて、赤い数字にドキッとしたら、すぐ売買せずにこれを確認してみる。

1. 何が下がっている?

自分の銘柄だけか。

業種全体か。

市場全体か。

2. 買った理由は残っている?

当時のメモや記事を見直す。

理由を書いていなければ、今からでも言葉にする。

3. 近いうちに使うお金?

数年以内に必要なら、投資を続けること自体を見直してもいい。

4. 持ちすぎていない?

眠れないほどつらいなら、金額を減らす方法もある。

5. 今、初めて見ても買いたい?

買値をいったん忘れて、現在の価格と情報だけを見る。

絶対的な判断方法ではないけど、惰性で持っていないか確認しやすい。

含み損を発見
     ↓
原因を確認
     ↓
投資理由を確認
     ↓
資金の用途と保有額を確認
     ↓
保有・一部売却・売却を選ぶ

私なら「耐えられるか」より「普通に暮らせるか」で考える

含み損への強さって、マイナス50%でも平気ですと言えることではないと思う。怖くてもいいんだよ。不安になってもいいんだよ。

ただ、そのせいで生活費へ手をつけたり、眠れなくなったり、仕事が手につかなくなったりするなら、投資額を見直したほうがいい。

私なら、含み損があっても、いつもどおりご飯を食べて眠れるかを基準にしたい。

平気なふりをして大きなポジションを持つより、少し小さくして長く続ける。

そのほうが自分には合っている気がするんだよね。


含み損のときに避けたい行動

  • 買値へ戻ることだけを理由に持ち続ける
  • 不安を消すためにナンピンする
  • 好材料だけを探し続ける
  • SNSの意見だけで売買する
  • 生活費から追加投資する
  • 一度の下落で投資方法を全部変える
  • 損失を取り返そうと別の銘柄へ飛びつく

特にナンピンは、平均取得価格を下げられる一方で、同じ商品への投資額が増える。

下がったから自動的にお買い得になるわけではない。

買い増すなら、安くなったからではなく、

今の情報でも買う理由があり、保有割合も大きすぎないから、というところまで確認したいね。


第14回チェックポイント

  • 含み損は未確定でも、無傷という意味ではない
  • 赤い数字だけで、自分の判断力まで否定しない
  • 買値ではなく、今後の価値と投資理由を見る
  • インデックスと個別株では対処を分ける
  • つらすぎるならポジションを小さくする
  • 確認日を決め、その場の感情で売買しない
  • 保有、売却、一部売却の3つから考える

まとめ——含み損は、自分への罰ではない

含み損を見ると、普通にへこむ。

「気にしなければいい」と言われても、気になるものは気になるよね。

その赤い数字は、あなたは投資に向いていませんという判定ではない。

今の価格と買値の差を表示しているだけ。

そこへ後悔や自己否定を足しているのは、自分の頭の中かもしれない。

だから、含み損を見たときは、

「耐えるべき?」「今すぐ売るべき?」の2択にしなくていい。

買った理由は残っているか。

生活に必要なお金ではないか。

持ちすぎていないか。

今の情報でも持ちたいか。

そのあたりを、ひとつずつ見ればいい。

私は、含み損との向き合い方を我慢の強さで決めたくない。

赤い数字を消すために売買するのではなく、自分の生活を守るために判断する。

それくらいの距離感でよさそうかなー。

チャートが赤い日まで、自分の一日を赤点にしなくていいんだよね。


一口メモ 私も資産が最高値を更新した後に急落を喰らうと、やっぱり「うっ……」となります(笑)。でも、含み損は投資家として一つ強くなるための「心の筋トレ」だと思っています。筋肉痛と同じで、痛みを乗り越えた先に、もっと強靭なメンタルが待っていますよ!


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※本記事は特定銘柄の購入推奨ではありません。紹介したデータや戦略は一つの強力な指標として参考にし、投資判断はご自身のリスク許容度に応じて行ってください。

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