【第11回】なぜ人は利益をすぐ確定し損を放置するのか?

初心者向け講座

「利益はすぐ確定するのに、損はなかなか切れない」

「少し利益が出たら怖くなってすぐに売ってしまうのに、損が出ると“いつか戻るはず”と何ヶ月も持ってしまう……」

投資を始めたばかりの頃、私もこの利小損大の罠にどっぷりハマっていました。今でも片足はハマっています。

でもこれは、経験や知識だけの問題ではないと思いませんか?

結論:人間の本能がそうさせている

私たちが利益を急ぎ、損を放置してしまうのは、意志が弱いからだけではありません。人間の脳に備わっている「プロスペクト理論」という仕組みが関係しています。

人間は「得をする喜び」よりも、「損をする痛み」を強く感じやすいといわれています。

なので、次のような行動が起きやすくなります。

  • 利益が出ているとき:
    「この喜びを失いたくない」「減る前に利確しておきたい」と、早く確定させて安心したくなる。
  • 損が出ているとき:
    「損を認めたくない」「いつか戻ると期待したい」と、非合理的な勝負を続けてしまう。

つまり人は、いつも合理的に判断しているわけではありません。感情にとって都合のいい選択肢を選んでしまう生き物なのです。

例えば、10万円で買った株が11万円になったとします。

この時は、1万円の利益が減るのが怖くなって、すぐ売りたくなります。

一方で、同じ株が9万円に下がった場合は、「まだ1万円の損だから戻るかもしれない」と考えやすくなります。さらに8万円、7万円と下がっても、「ここまで来たら売れない」となり、損失を確定する判断がどんどん重くなります。

利益は早く確定したくなるのに、損は確定したくない。

これが、利小損大が起きる分かりやすい形です。

心理の説明:なぜ損を放置してしまうのか?

まずは、この行動に対してどのような心理が働いているのかを考えてみましょう。

損失回避

上記でも書きましたが、人は損する苦しみを強く感じてしまいます。そのため、損失を確定する行為を極端に避けようとしてしまいます。

含み損のままなら、まだ「負けていない」と思える。でも売った瞬間に損が確定する。

この心理が、損切りをどんどん難しくしていきます。

アンカリング

買った価格に引きずられる心理です。

「ここまで戻ったら売ろう」「元の価格に戻るはず」と考え、現実の価格ではなく過去の価格に引きずられてしまいます。

本来なら、今の業績や相場環境を見て判断するべきです。でも、自分の買値が判断の中心になってしまうことがあります。

プロスペクト理論

利益が出ていると慎重になり、損失が出ていると逆にリスクを取りに行きやすい傾向があります。

利益はすぐ確定。損失は引き延ばす。

本来の投資とは逆の行動をとってしまいます。

そして、損を放置する、いわゆる塩漬けにすると、以下の3つのものを同時に失いやすくなります。

  • お金:
    損がさらに拡大するリスク。
  • 時間:
    そのお金を他の優良な銘柄に回して増やすチャンス。
  • メンタル:
    毎日マイナスの画面を見るストレスで、正常な判断がしにくくなる。

投資への影響:勝率は高いのに資産が減る理由

利小損大の怖いところは、勝率が高くても資産が減ることです。

  • 小さな利益ばかり積み重なる
  • 大きな損失が残り続ける

10回のうち7回勝っていても、1回の大きな負け、つまり損切り遅れで利益をすべて吹き飛ばすことがあります。

これが、投資を始めたばかりの人がつまずきやすい典型的なパターンです。

例えば、7回の取引でそれぞれ3,000円ずつ利益を取れたとします。7勝しているので、利益は合計21,000円です。
しかし、1回だけ損切りが遅れて30,000円の損失を出すと、それだけで全体ではマイナスになります。
勝っている回数は多いのに、資産は増えない。
利小損大の怖さはここにあります。

さらに厄介なのは、損切りできない銘柄が増えていくことです。

資金が拘束され、他のチャンスに動けなくなる。いわゆる機会損失です。
これはパフォーマンスだけではなく、判断力も鈍らせてしまいます。

含み損の銘柄が増えてくると、「これを売るべきか」「でも今さら売れない」「他に買いたい銘柄があるのに資金がない」と、頭の中がどんどん重くなります。

投資でつらいのは、損そのものだけではありません。次の判断まで鈍っていくことです。

対策:本能に抗う方法はルールと仕組化

人間の感情に頼っている限り、この罠から抜け出すのは難しいです。意識だけで解決する問題ではありません。

だからこそ、仕組みで対処する必要があります。

買う前に売る価格を決める

感情が動く前に、出口戦略をセットしておきます。

買ってから考えると、どうしても自分に都合よく解釈してしまいます。

「もう少し待てば戻るかも」「決算まで見よう」「地合いが悪いだけかも」と考えて、売る判断がどんどん後ろにずれていきます。

だから、買う前に撤退ラインを決めておくことが大切です。

逆指値を活用する

自分の手が震えて売れないなら、システムに任せるのも一つの方法です。

逆指値が万能というわけではありません。でも、感情で損切りできない人にとっては、かなり強い味方になります。

損切りを必要経費と考える

損切りは失敗ではなく、投資を続けるための必要経費です。
事業の仕入れと同じです。全部の判断を当てることはできません。
大事なのは、間違えた時に致命傷にしないことです。損切りは、利益を掴むための必要経費だと割り切る必要があります。

メンタルログをつける

なぜ損切りができなかったのか。なぜ早く売ってしまったのか。

自分の行動を記録しておくと、自分のパターンが見えてきます。

  • 毎回同じところで焦っている
  • 毎回同じ言い訳で損切りを遅らせている
  • 毎回少し利益が出るとすぐ逃げている

こういう癖が分かるだけでも、次の判断はかなり変わります。

まとめ

人が利益をすぐ確定して、損を放置するのは異常ではありません。むしろ自然な反応です。
しかし、自然な反応だからといって、そのまま放置していいわけではありません。
含み損の銘柄を持ち続けると、その資金は動かしにくくなります。
本当は別の銘柄に回したい。新しく良い投資先が見つかった。でも、塩漬け銘柄を売れないから資金がない。

こうなると、損失だけでなく、次のチャンスまで逃すことになります。
だからこそ必要になってくるのは、感情に勝つことではなく、感情に左右されない仕組みを作ることです。

利益を伸ばす。損は小さく切る。

言葉にすると簡単ですが、実際にやるのはかなり難しいです。
だからこそ、最初からルールにしておく必要があります。
これが、利小損大から抜け出すために一番現実的な方法だと私は思います。

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※本記事は特定銘柄の購入推奨ではありません。紹介したデータや戦略は一つの強力な指標として参考にし、投資判断はご自身のリスク許容度に応じて行ってください。

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