最近、SNSやブログでこんな言葉を見かける。
「オルカンだから安心」
「30%くらいの下落なら想定している」
ここまで考えて投資している時点で、かなり慎重だと思う。
実際、10%下がっただけでも不安になる人は多い。30%下落した場面まで想像しているなら、何も考えずに買っているわけじゃないよね。
ただ、ひとつだけ気になることもある。
株式市場の大きな下落は、30%で止まるとは限らない。
全世界へ分散していても、株式中心であることは変わらない。
国や企業は分散できていても、「株式という資産」からは逃げられていないんだよね。
もし50%、60%と下がったら。
それでも今と同じ投資を続けられるだろうか。
今回は怖がらせたいわけではなく、そこまで下がっても生活を壊さない形を、一緒に考えてみようかな。
オルカンは分散されている。でも安全資産ではない
オルカンの強みは、ひとつの国や企業へ集中しないこと。
米国、日本、欧州、新興国など、世界中の株式へ広く投資できる。
「どの国が次に伸びるか分からない」
という悩みを、ある程度まとめて引き受けてくれるんだよね。
ただし、ここで勘違いしたくないのが、
世界へ分散している=大きく下がらない
ではないこと。
世界的な金融危機が起きれば、各国の株式が一緒に売られることもある。
オルカンのような全世界株式ファンドの参考になるMSCI ACWIは、先進国と新興国の大型・中型株を広く含む指数。それでも、2007年10月末から2009年3月にかけての最大ドローダウンは約58%だった。MSCI ACWI Index
オルカンの分散
企業の分散 できている
国の分散 できている
業種の分散 できている
資産クラス ほぼ株式のまま
つまり、オルカンは「ひとつの会社が倒れたら終わる」というリスクを小さくしてくれる。
でも、世界中の株式が下がる場面まで消してくれるわけではないんだよね。
暴落率は、同じ物差しで見ないとややこしい
暴落の記事では、
- コロナショック約35%
- ITバブル崩壊約50%
- リーマンショック約57%
- 世界大恐慌約85%
こんな表をよく見かける。
ただ、この数字は同じ指数を並べたものではないことが多い。
S&P500なのか、NASDAQなのか、ダウ平均なのか、世界株指数なのか。
配当を含むのか。
ドル建てなのか、円建てなのか。
高値と安値に日次データを使うのか、月次データを使うのか。
ここが違えば、下落率も変わる。
だから今回は、オルカンに近い世界株の参考として、MSCI ACWIを中心に考えたい。
| 参考データ | 最大下落の目安 |
|---|---|
| MSCI ACWI・世界金融危機 | 約58% |
| S&P500・コロナショック | 約34% |
MSCI ACWIの数字は月次のネットリターンをもとにした最大ドローダウン。S&P500は2020年2月19日から3月23日までに33.8%下落したとS&P Dow Jones Indicesがまとめている。MSCI、S&P Global
指数や期間が違うので、直接どちらが危険という比較ではないよ。
言いたいのは、
30%を超える下落は、空想ではなく過去に起きている
ということなんだよね。
なお、日本から円で投資する場合は為替の影響も加わる。そのため、ドル建て指数と日本の投資信託がまったく同じ下落率になるわけではない。
5,000万円が2,000万円になる場面を想像できる?
下落率だけなら、意外と冷静に見られる。
「マイナス30%か。まあ想定内かな」
となりやすい。
でも、金額へ直すと少し見え方が変わる。
| 下落率 | 5,000万円の評価額 |
|---|---|
| 10%下落 | 4,500万円 |
| 30%下落 | 3,500万円 |
| 50%下落 | 2,500万円 |
| 60%下落 | 2,000万円 |
60%下がれば、5,000万円が2,000万円になる。
3,000万円減る。
しかも、一日で減るわけではないかもしれない。
4,500万円、4,000万円、3,500万円。
少し反発して、また下がる。
気づけば2,000万円。
その間、ニュースでは「景気後退」「金融機関への不安」「まだ底ではない」
そんな言葉が毎日のように流れる。
SNSでは「積立を続けます」と言っていた人が、少しずついなくなっていく。
たぶん、数字だけ見ていたときとは、かなり違う気持ちになるよね。
本当に怖いのは、下落率より「いつ終わるか分からないこと」
30%下落した瞬間に「はい、ここが底です」と表示されるなら、そこまで怖くない。
でも実際は、30%下がった時点では、その先が分からない。
明日から戻るかもしれない。
さらに20%下がるかもしれない。
何年も戻らないかもしれない。
この「終わりが見えない感じ」がつらいんだよね。
10%下落
「まあ調整かな」
20%下落
「そろそろ反発するかも」
30%下落
「想定していたところまで来た」
さらに下落
「え、ここからどうなるの?」
30%まで耐える準備をしていた人ほど、その先へ進んだときに気持ちが崩れることもある。
想定していた地図が、そこで終わってしまうからね。
だから暴落対策では、
「何%まで下がるか」
だけでなく、
「想定を超えたら、私は何をするか」
まで決めておいたほうがよさそう。
30%下落したあと、さらに30%下がったら?
ここも少しややこしい。
最初に30%下がり、そこからさらに30%下がった場合、合計60%下落ではない。
100万円で考えると分かりやすい。
100万円
↓ 30%下落
70万円
↓ さらに30%下落
49万円
最初の100万円から見ると、51%下落になる。
30%+30%で60%ではないんだよね。
とはいえ、実際に持っている側からすればかなり苦しい。
「もう30%も下がったから、そろそろ戻るだろう」
と思ったところから、さらに資産が3割減る。
二段目の下落がつらいのは、計算よりも気持ちの部分かもしれないね。
深く下がるほど、元に戻す上昇率は大きくなる
資産が50%減った場合、50%上がれば元通り。
……ではない。
100万円が50万円になり、そこから50%上がっても75万円。
元の100万円へ戻るには、50万円から100万円への上昇、つまり100%上がる必要がある。
| 下落率 | 元に戻るために必要な上昇率 |
|---|---|
| 10% | 約11% |
| 30% | 約43% |
| 50% | 100% |
| 60% | 150% |
これは「指数関数の罠」というより、下落率と回復率が対称ではないという話。
深く下がるほど、元の金額へ戻るためのハードルは大きくなる。
ただし、ここで必要以上に怖がらなくてもいい。
積立中なら、下落中にも安い価格で買い続けることになる。
保有資産が元の高値へ戻る前に、積立分を含めた自分の資産全体が回復する可能性もある。
大事なのは、回復率の数字を見て絶望することではなく、回復を待てる家計になっているかなんだよね。
「暴落でも買える?」より「売らずに生活できる?」を考える
暴落時には、
「安くなったら買い増ししよう」
と考える人も多い。
それはひとつの戦略。
でも私は、買い増しできるかより先に、
売らずに生活を続けられるか
を考えたい。
暴落中に仕事が不安定になることもある。
ボーナスが減るかもしれない。
急な医療費や教育費が必要になるかもしれない。
株価だけ下がり、収入や生活は何も変わらないとは限らないんだよね。
株価が下がる
+
収入も減る
+
急な出費が来る
↓
安いところで売らざるを得ない
いちばん避けたいのは、怖くなって売ることだけじゃない。
生活費が足りなくなり、売るしかなくなること。
だから、暴落対策の最初は追加投資資金ではなく、生活を守る現金でもいいと思う。
現金は「暴落用の弾」だけじゃない
現金を持っていると、
「投資していないから、もったいない」
と感じることもある。
相場が上がり続けていると、なおさら。
でも現金には、リターン以外の役割がある。
- 急な出費へ対応できる
- 収入が減っても生活できる
- 暴落中に投資商品を売らずに済む
- 積立を続けやすくなる
- 気持ちに余裕ができる
私は、暴落対策としての現金は「買い向かうための弾」というより、売らなくて済むための時間だと思っている。
現金10%が正解。
20%なら安全。
そんな共通の答えはない。
毎月の支出、仕事の安定性、家族構成、数年以内の予定によって必要額は変わるからね。
ただ、現金0%と、生活費をしばらく払える現金がある状態では、同じ暴落でもかなり景色が違うはず。
100%株式と、現金を混ぜた場合の違い
5,000万円を持っていて、株式が60%下落したと仮定してみる。
全額を株式で持っていた場合
株式5,000万円
↓ 60%下落
2,000万円
株式80%、現金20%の場合
株式4,000万円 → 1,600万円
現金1,000万円 → 1,000万円
合計 → 2,600万円
| 配分 | 株式60%下落後 |
|---|---|
| 株式100% | 2,000万円 |
| 株式80%・現金20% | 2,600万円 |
| 株式70%・現金30% | 2,900万円 |
※現金部分の利息やインフレ、為替、税金などを考慮しない単純なストレステストです。
もちろん、株価が上昇したときは株式100%のほうが増えやすい。
現金が多いほど安心とは限らないし、長期ではインフレによって現金の購買力が落ちる可能性もある。
だから、どちらが正解という表ではないよ。
見るべきなのは、
どの配分なら、60%下落しても売らずにいられそうか
というところ。
個別の「不況に強そうな株」を足せば守りになる?
まず、特定企業が次の不況でも強いとは限らない。
特に旅行・宿泊関連は、景気や移動制限の影響を受けることもある。
そしてオルカンを持っているなら、世界の多くの大企業はすでに中に含まれている。
そこへ個別株を追加すると、「守りを増やす」というより、その企業への配分を大きくすることになる。
オルカン
→ 世界中の株式へ分散
個別株を追加
→ その企業への集中度が上がる
株式の下落を和らげたいなら、同じ株式の中から「強そうな銘柄」を探すだけでなく、現金や債券など、違う資産クラスを含める考え方もある。
SECの投資家向け情報でも、株式、債券、現金など異なる資産へ配分することが分散のひとつとして紹介されている。ただし、分散しても損失を完全に防げるわけではない。
ゴールドを入れれば安心?
ゴールドは、株式と異なる動きを期待して組み込まれることがある。
実際、危機時の分散先として注目されることも多い。
ただ、ゴールドも「暴落したら必ず上がる保険」ではない。
ゴールドを扱うWorld Gold Council自身も、株式下落時の良好な成績は保証されるものではないとしている。World Gold Council
ゴールドにも、
- 価格変動がある
- 配当や利息を生まない
- 為替の影響を受ける
- 買うタイミングによっては下がる
といった特徴がある。
だから「不変の価値」と言い切るより、
株式とは違う動きを期待する選択肢のひとつ
くらいがちょうどいいかな。
現金、債券、ゴールド。
どれも万能ではない。
それぞれ違う弱点を持っているからこそ、役割を決めて組み合わせるんだよね。
暴落対策は、商品より先に生活を守る
私は、暴落対策というとすぐに、
「何を買えば守れる?」
という話になるのが少し気になる。
でも、本当の守りは投資口座の外にもある。
- 生活防衛資金
- 無理のない住宅費
- 高金利の借金を減らす
- 収入源をひとつに寄せすぎない
- 保険を必要な範囲で整える
- 数年以内に使うお金を投資しない
こういうものも、立派な暴落対策。
相場が60%下がっても、家賃や住宅ローンを払える。
食費や教育費を無理に削らなくていい。
投資商品を売らずに済む。
ここまで作れていれば、チャートを見て不安になっても、生活までは崩れにくい。
心を鍛えるより、心が折れても困らない構造を作る。
私はそっちのほうが現実的だと思っている。
最悪シナリオを、一度だけ数字にしてみる
暴落を毎日心配する必要はない。
でも、投資を始める前や積立額を増やす前に、一度くらいは数字にしてみてもいい。
確認すること
| 質問 | 自分の答え |
|---|---|
| 株式が50%下がったら資産はいくら? | |
| 収入が減っても生活できる? | |
| 近いうちに使うお金を分けてある? | |
| 積立を続けられる? | |
| 何も買い増せなくても持ち続けられる? |
「暴落したら買い増す」と決めても、実際には買えないこともある。
それでもいい。
暴落時の合格点は、底で大量に買うことじゃない。
生活を壊さず、予定外の売却をしないこと。
まずはそれで十分じゃないかな。
私なら、暴落時のルールを3つだけ決める
ルールを増やしすぎると、いざというときに読まなくなる。
だから私なら、これくらいにする。
積立設定は、その日の気分で止めない
家計に問題がない限り、自動積立はそのまま。
相場予想を理由に毎月オン・オフしない。
生活防衛資金では買い増さない
安く見えても、生活用の現金には手をつけない。
追加投資は、本当に余っているお金だけ。
不安な日は、売買画面を開かない
ニュースを見るのはいい。
でも、怖くなった勢いで注文しない。
翌日も同じ考えなら、そのとき改めて判断する。
シンプルだけど、暴落時はこのくらいのほうが使いやすそう。
暴落前に決めたい「生活の最低ライン」
資産額が減ると、生活まで全部縮めなければいけないような気持ちになる。
でも、あらかじめ守るものを決めておくと少し違う。
- 家族との月1回の外食は残す
- 子どもの習い事は相場だけを理由にやめない
- 健康や睡眠に使うお金は削りすぎない
- 趣味の予算をゼロにしない
- 投資の含み損と生活費を混ぜない
私は、こういう小さなラインが意外と大切だと思っている。
資産額が減っても、いつもの生活が全部消えるわけではない。
投資の数字と、自分の幸福を完全に連動させない。
それも暴落対策のひとつなんだよね。
まとめ——暴落に耐えるのは、強い心より「売らなくて済む仕組み」
オルカンは世界中の株式へ分散できる。
でも、株式市場全体が下がれば、オルカンも大きく下がる可能性がある。
30%下落を想定しているのは悪くない。
むしろ、何も考えていないよりずっといい。
ただ、過去の世界株では50%を超える下落も起きている。
だから、想定を少し先まで伸ばしてみたい。
30%下落
→ 想定内
50%下落
→ 生活は続けられる?
60%下落
→ 売らずに済む現金はある?
暴落対策は、底を当てることではない。
暴落中に勇敢な顔で買い向かうことでもない。
現金を残す。
近く使うお金を分ける。
必要なら株式比率を下げる。
相場を見ていないときでも動く、自動積立を作る。
自分の生活を守るラインを決める。
こういう地味な準備のほうが、たぶん本番では役に立つ。
「60%下がっても、カフェで笑顔で読書しよう」
そこまで強くなくていいんじゃないかなー。
暴落が来たら、普通に怖くなると思う。
青ざめてもいいし、チャートを閉じてもいい。
怖がりながらでも家賃を払い、積立を止めず、売らずに朝を迎えられる。
私が作りたいのは、そんなポートフォリオなんだよね。
※本記事は特定銘柄の購入推奨ではありません。紹介したデータや戦略は一つの強力な指標として参考にし、投資判断はご自身のリスク許容度に応じて行ってください。
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