連勝すると急に投資がうまくなった気がする|利益のあとにロットを増やさない

考察 投資哲学・メンタルラウンジ

負けた日は反省するのに、勝った日は反省しない

買った株が上がる。次に買った株も上がる。決算またぎもうまくいった。

3回くらい続くと「最近ちょっと分かってきたかも」と思う。うれしいし、自信も出ますよね。投資を始めた頃より決算を読めるようになったし、銘柄の選び方も前より良い。実際に成長している部分だってあるはず。

その流れで、次の銘柄だけいつもの倍を入れてみる。監視する業種も増えるし、取引回数もちょっと増える。

負けた後の無茶は見つけやすいのに、勝った後の無茶は「攻められるようになった」と見えやすいんですよね。直前まで利益が出ているから、止める理由もなかなか見つからない。

利益が出たのは素直にうれしい。でも「今回うまくいった」と「次も大きく張っていい」は、いったん別で置いておきたいところ。

利益は実力の証拠ではある。でも実力だけの証拠ではない

投資の利益には、自分の判断以外もいろいろ混ざってきます。

利益へ混ざっているものたとえば振り返る時の質問
銘柄分析業績改善や割安さを先に見つけた買う前にその理由を書けていた?
相場全体指数が強く、多くの株が上がった同じ期間の指数より伸びた?
テーマの追い風半導体、防衛、銀行などへ資金が集まった同業他社も一緒に上がっていない?
タイミングたまたま材料発表の直前に買った発表内容まで想定できていた?
想定外のニュースが良い方へ出た同じ手順をもう一度使える?

たとえば自分の株が15%上がっていても、同じ期間に業種全体が13%上がっていたなら、自分の銘柄だけで取れた差は2%ほど。15%を丸ごと銘柄選びの実力にすると、自信が少し膨らみすぎかも。

指数が横ばいなのに、決算の改善を読んで15%取れたなら、分析が効いた可能性は上がりそう。それでも1回だけでは、もう一度できるかまでは分からない。

全部を運扱いしなくていいし、全部を自分の手柄にしなくてもいい。自分が読めた部分だけ、ちゃんと残すくらいでよさそう。

成功すると、自分の能力を高く見積もりやすくなる

GervaisとOdeanの研究「Learning to Be Overconfident」では、取引の成功を自分の能力へ強く結びつけると、経験の早い段階で過信が育ちやすいモデルが示されています。

論文の言い方はちょっと固いので、普段の言葉に直すとこんな感じ。

勝った時は「自分の読みが良かった」。負けた時は「地合いが悪かった」「あのニュースは読めないよ」。まあ、そう思いたくなる。

嘘をついているわけでも、反省が足りないわけでもないんですよね。勝ち負けの理由は目で見えないので、自分が納得しやすい説明だけ残りやすかったりする。

BarberとOdeanが3万5,000超の証券口座を調べた研究では、過信が強いと想定される集団ほど売買が多く、手数料などを引いた成績が低くなる結果が報告されています。この研究は性別を過信の代理変数に使っているので、誰にでもそのまま当てはめる話ではありません。

それでも「自信が増えると、売買も増えやすいかもね」という見方は使えそう。

自信が出るのは悪くない。自信に合わせて投資額と回数まで一緒に膨らむと、少し話が変わってきます。

連勝後は、判断より先にロットが変わる

いつも20万円ずつ投資していた人が、2回続けて合計3万円の利益を出したとします。

次は調子がいいから60万円。そこで12%下がると、損失は7万2,000円。

取引投資額騰落率損益
1回目20万円8%上昇+1万6,000円
2回目20万円7%上昇+1万4,000円
3回目60万円12%下落-7万2,000円
合計-4万2,000円

勝率は3回中2回。そんなに悪く見えない。でもロットを変えた1回で、前の利益までまとめて消えています。

3回目の銘柄だけ、分析がひどかったとは限らない。最初の2回と同じくらい調べても、相場が変われば外れることはある。

損失を大きくしたのは予想の外れより、直前の勝ちを理由に投資額を3倍へ変えたこと。読みより先に、金額が変わっているんですよね。

利益が続く
    ↓
自分の読みが良くなった気がする
    ↓
確認項目を減らす・ロットを増やす
    ↓
相場環境が変わる
    ↓
同じ外れでも損失だけ大きくなる
    ↓
急に自信をなくし、取り返したくなる

勝った後の過信と、負けた後の取り返し売買。別々に見えるけれど、わりとつながっています。

利益後にサイズを上げなければ、その後の損失も少し小さくなる。そうすれば「早く取り返さなきゃ」まで行かずに済むかもね。

良い結果と、良い判断は同じじゃない

信号を見ずに道路を渡って、たまたま車が来なかった。結果だけなら無事。でも次も続けたいかと聞かれたら、ちょっと違いますよね。

投資も似たところがあります。決算資料を読まず、SNSで話題の銘柄を大きく買い、たまたま上がった。利益は本物。でも手順まで満点にはしにくい。

反対もある。業績、財務、割高感、損失額まで確認して買ったのに、想定外のニュースで下がった。損失は出たけれど、事前の手順が全部ダメだったとは限らない。

結果手順振り返り方
利益事前ルールを守った再現できた部分を残す
利益根拠が薄く、予定より大きく買った利益と手順を分けて直す
損失想定内の金額でルールを守った前提と想定の甘さを確認する
損失連勝後にロットを増やした銘柄よりサイズ変更の理由を直す

利益だけを採点表にすると、危ない手順まで満点になってしまう。

損益はもちろん見る。それとは別に、手順にも点数をつける。二枚に分けておけば、負けた時に自信を全部なくさずに済みそうです。

長期投資でも過信は起きる

ロットという言葉を使うと、短期売買だけの話に聞こえるかも。でも長期投資でも、形を変えて出てきます。

上昇相場で保有株がほぼ全部上がり、「自分は成長株を見るのが得意」と感じて同じテーマを増やす。積立投資が順調なので、生活防衛資金まで一括で入れたくなる。保有株が2倍になり、分散していた他の資産を売って一銘柄へ寄せる。

この時に増えているのは、実力だけじゃないかもしれない。相場全体の追い風や、同じ値動きをする銘柄への集中も混ざっています。

特に同じテーマの株を複数持つと、銘柄数は増えてもリスクの原因は一つだったりする。AI関連が全部上がっている時に5社で利益が出ても、別々の成功を5回積んだとは数えにくい。同じ風を5枚の帆で受けている感じかな。

長期投資なら、最近の利益より家計、投資期間、資産全体の偏りから金額を決めておきたいところ。

上がったから増やすのではなく、予定額からずれたので戻す。これくらいの温度でよさそう。

利益のあとだけ使う「10分メモ」

負けた日は原因を考えるのに、勝った日は口座を眺めて終わり。私もわりとこっちへ寄ります。

なので利益が出た時だけ、短いメモを残してみる。

確認項目書くこと
買う前の予想何が起きると思っていた?
実際に起きたこと予想した材料で上がった?
相場の追い風指数や同業他社も上がった?
偶然だった部分想定していない好材料はあった?
守れたルール金額、買値、保有期間は予定どおり?
危なかった手順根拠の後付けや予定外の追加はなかった?
次回も使うもの再現できそうな確認方法は何?
次回は変えないもの直近の利益だけでロットを上げない

全部をきれいに書かなくても大丈夫。「指数も強かった」「決算の方向は読めたけど、上方修正までは想定外」くらいで十分。

勝因を細かくしても、自信がゼロになるわけじゃない。自分が読めた部分は残して、運だった部分だけ外せばいい。

「なんとなく勝てた」より、自信を置く場所も見えやすくなるんですよね。

ロットを増やすなら、連勝ではなく仕組みが変わった時

投資額は、ずっと同じじゃなくてもいいと思う。

収入や金融資産が増え、許容できる損失額も変わった。数カ月分の記録から、同じ手順で判断できている。資産配分を見直し、特定銘柄へ偏らない範囲で増やす。

こういう理由なら、最近の連勝とは分けて考えてよさそう。

増額の理由そのまま増やさない方がよさそうな理由
収入・資産・余剰資金が増えた直近3回が勝ちだった
許容損失額を見直した含み益があるから損しても平気
資産全体の配分を調整した次の銘柄には強い自信がある
記録を重ねて手順を改善したSNSでも同じ予想が増えている
生活資金と分けた余力がある今の相場なら何を買っても上がりそう

「自信があるから大きく買う」も、気持ちは分かる。でも自信の強さが、そのまま予測精度になるわけじゃない。

増額の根拠は気分ではなく、家計と資産全体へ置くくらいでいいと思います。

連勝した直後だけ、次の数回は基準額を変えないのもあり。少し冷めてから考えても、そんなに遅くないですしね。

自信を捨てるのではなく、置く場所を変える

投資で自信がまったくなければ、何も決められない。だから過信が怖いといって、利益を全部「運が良かっただけ」で片づけるのも違う気がします。

調べたこと。待てたこと。予定額を守ったこと。そこまで消さなくていい。

自信を置くなら「次も当てられる」より、「外れても決めた金額で止まれる」「利益が出ても急にサイズを変えない」「あとから手順を見直せる」の方へ。

相場を当てる自信は、値動きで簡単に揺れます。手順を守る自信なら、自分で少しずつ作れそう。

連勝した日は喜んでいい。でも、その日の気分で次の投資額まで決めない。利益は口座へ残し、ロットはいったん基準へ。そのくらいの分け方が使いやすいかな。

まとめ:連勝は、ロットを増やす許可証ではない

利益が続くと、自分の分析力が上がったように感じる。実際に成長している部分もあるし、利益まで疑わなくていい。

一方で、利益には相場全体、業種の追い風、偶然のニュースも混ざってくる。それを全部自分の実力として受け取ると、確認項目が減り、取引回数や投資額だけ先に増えやすい。

勝った後は、損益と手順を別々に採点する。指数や同業他社と比べ、想定していなかった好材料も書く。ロットを増やすなら連勝ではなく、家計、資産、許容損失、記録の積み重ねを理由にする。

勝てた自分を否定しなくていいんです。

次も当たる自信へ全部変えず、同じ手順を続けられる自信へ少しだけ移しておく。利益後のメンタルは、そのくらいゆるく整えておけばよさそう。


※本記事は特定銘柄の購入推奨ではありません。紹介したデータや戦略は一つの強力な指標として参考にし、投資判断はご自身のリスク許容度に応じて行ってください。

あわせて読みたい

今回の記事では、利益が続いた後にロットを増やしたくなる心理について考えました。

勝てたことはうれしい。

でも、連勝したからといって、次の投資額まで大きくしていいとは限りません。

一度のミスで退場しないためのポジションサイズについては、こちらの記事でも整理しています。

関連記事:
ケリー基準による最適ポジションサイジング│一度のミスで退場しないための資金配分術

利益が出た後ほど、気持ちは前のめりになりやすいです。

そんな時に大事なのは、相場を当てることより、冷静な時にだけ動くルールを持っておくことだと思っています。

関連記事:
勝てる人は「冷静な時にしか動かない」

連勝後は、投資額だけでなく取引回数も増えやすくなります。

でも、何もしない方が合理的な時間もあります。

余計な売買を減らす考え方はこちらです。

関連記事:
何もしない勇気|何もしない投資が最強な理由

大きな失敗は、いきなり起きるとは限りません。

「今回だけ少し多めに買う」
「次だけルールをゆるめる」

そういう小さな例外が積み重なることで、大きな損失につながることもあります。

関連記事:
投資の失敗は1発ではなく積み重ねで起きる|小さな例外が大損につながる理由

サイト案内

最新記事はこちら
→ 最新記事・人気記事はこちらから

私のプロフィールはこちら  
→ どんな人が書いているか知りたい方へ

サイトマップはこちら
→ ブログ全体の構造を一覧で確認できます

更新スケジュールはこちら
→このブログの更新頻度、スケジュールをご確認ください

この記事に対して私に対しての質問や疑問、こういうものがあるよ!等の意見がありましたら是非コメントをおまちしております!

ランキングやメッセージをいただけると励みになります。もしよければお願いいたします

相場に振り回されない「自分軸」を作るための3冊

サイコロジー・オブ・マネー

「富を築くのは知能ではなく振る舞いである」と説く、投資メンタルの必読書。焦燥感から抜け出したいあなたへ。

ゾーン ― 相場心理学入門

投資をギャンブルから「確率の作業」へ。暴落時に冷徹な規律を保つための最強のトレーニング本です。

DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール

何のために投資をするのか?趣味や家族との時間を大切にする「なんなん流」の生き方を後押ししてくれる、人生のバイブル。

※画像クリックでAmazon詳細ページへ飛びます

コメント

タイトルとURLをコピーしました