5銘柄あるから分散できてる。とは限らないんですよね。
証券口座を見ると、ちゃんと5銘柄に分かれてるし、1社だけに全額を入れているわけでもない。それなのに相場が下がる日は、5社そろって下がるんですよね。
「銘柄を分けた意味あった?」となるよね。
まあこれは私もよくやることなんですけどね。
たとえば半導体製造装置を3社、半導体材料を1社、AIサーバー関連を1社持っているとします。会社名も事業内容もそれぞれ違います。でも5社とも、AI向け設備投資、半導体市況、米国の金利、ドル円あたりに強く反応するなら、値動きの理由はそこまで分かれていないかも。
5銘柄に見えて、実際は「AIと半導体が伸びる」という一つの大きな予想へ乗っているんです。銘柄数だけ見ると分散、中身を見ると集中。こういう口座って意外と作りやすいんですよね。
マーコウィッツが見ていたのは、銘柄数より組み合わせ
1952年、ハリー・マーコウィッツは『Portfolio Selection』という論文を出しています。現代ポートフォリオ理論の出発点として知られる論文です。
話をざっくり言うと、投資先を一つずつ見るだけでは足りません。AとBを一緒に持った時、二つがどう動くかまで見てみようという考え方なんです。
Aが下がる日にBも同じように下がるなら、Bを足してもクッションは弱い。Aが下がる時にBが上がったり、別の動きをしたりするなら、組み合わせた時の揺れを小さくできるかもしれない。
別々の会社を持つだけでなく、別々の動きをするものを持ってみる。この発想が分散投資の芯になっています。
相関係数は「一緒に動く度」を数字にしたもの
相関係数はマイナス1からプラス1までの数字で表す。名前は難しそうだけど、見方はシンプル。
| 相関係数 | 動き方のイメージ | 分散の効き方 |
|---|---|---|
| +1に近い | 上がる日も下がる日もほぼ一緒 | 弱い |
| 0に近い | 二つの値動きに強い関係が見えない | 効きやすい |
| -1に近い | 一方が上がる時にもう一方が下がる | 強く効く |
プラス1なら、二人で同じ方向へ走っている感じ。ゼロ付近なら別行動。マイナス1なら綱引きみたいな動きです。
勘違いしやすいけど、相関ゼロは「安全」という意味ではありません。AもBも大きく下がることはあります。過去の値動きから、二つの上下に強い直線関係が見えなかったというだけです。
同じ値動きの二つを持っても、揺れは減りにくい
少しだけ数字を使ってみましょう。AとBの値動きの大きさがどちらも年20%で、半分ずつ持つとします。期待リターンや手数料はいったん置いて、値動きだけを見る簡単な例になります。
| AとBの相関 | 50%ずつ持った時の値動きの大きさ | どう見ればいいか |
|---|---|---|
| +1 | 20.0% | 二つに分けても揺れは同じ |
| 0 | 約14.1% | 別々に動く分だけ揺れが小さくなる |
| -1 | 0% | 理論上は互いの動きを打ち消す |
相関がゼロでも、20%の半分で10%になるわけではありません。計算すると約14.1%になります。マイナス1で値動きが完全に同じ大きさなら理論上はゼロ。でも現実に、ずっと完全な逆方向を保つ組み合わせはまず見つかりません。
数字そのものを暗記しなくてもいい。「同じくらい荒い資産でも、動くタイミングがズレれば全体の揺れは小さくなる」。それが分かれば十分使える。
会社名が違っても、同じニュースで下がる
自分の口座が分散できているかを見るなら「業種が違う」で止めず、何のニュースで利益が増減するかまで見た方が良いよ。
| 保有の組み合わせ | 別々に見える理由 | 実は重なっているもの |
|---|---|---|
| 銀行株を3社 | 会社が3つある | 金利、景気、貸倒れ |
| 自動車メーカーと部品会社 | 業種分類や会社名が違う | 自動車生産、為替、関税 |
| 半導体装置と半導体材料 | 製品が違う | 半導体設備投資、AI需要 |
| 商社と資源株 | 事業範囲が違う | 資源価格、世界景気、為替 |
| 不動産株とREIT | 株と投資口で商品が違う | 金利、不動産価格、賃料 |
銀行株を3社に分ければ、1社だけの不祥事や貸倒れには強くなる。でも金利低下や景気悪化で銀行全体が売られる時は、3社まとめて下がりやすい。
つまり分散には二つある。会社固有の事故を減らす分散と、市場全体や共通テーマの揺れを減らす分散。この二つを一緒にすると「3社も持ってるのに全部下がった」と混乱する。
投資信託を3本買っても、中身が同じことがある
個別株だけの話ではない。全世界株式、米国株式、米国ハイテク株の投資信託を1本ずつ持っていると、商品は3本に見える。
でも全世界株式の中にも米国株が入り、米国株式と米国ハイテク株には同じ大型企業が入っていることがある。3本買うことで地域や企業を広げたつもりが、実際は米国大型株の比率を上げている場合があるんだよね。
それ自体が悪いわけではありません。米国大型株を多めに持ちたいなら、狙いどおりでOK。でも「3本あるから広く分散できている」と思っているなら、中身と考えが少しズレているかも。
投資信託は商品名より、上位組入銘柄、国別比率、業種比率、連動する指数を見ます。個別株も一緒に持っているなら、その株が投資信託の中にすでに入っていないかも見てみよう。器の数より、中に何が入っているかの方が分かりやすいですよ。
図解:数えるのは銘柄ではなく、下がる理由
保有商品を並べる
↓
株・投信・ETFの中身を見る
↓
利益を動かす理由を書く
金利 / 為替 / 景気 / AI投資 / 資源価格
↓
同じ理由に金額が集まっていないか確認
↓
会社固有の分散と、共通リスクの分散を分ける
10銘柄を1行ずつ書くより、10銘柄がどの理由で動くかを横に書く方が、偏りは見つけやすい。
相関はずっと同じではない
相関係数には弱点もある。過去の値動きから計算した数字なので、未来も同じとは限らない。
普段は別々に動いていた株でも、市場全体が崩れると同時に売られることがあります。LonginとSolnikの2001年の研究では、国際株式市場の相関は極端な上昇局面より、極端な下落局面で高まる結果が示されています。
「危ない時ほど一緒に下がるなら、分散は意味ないじゃん」と思うかもしれない。そこまで言い切るのも違う。分散で下落をゼロにはできないけど、1社の倒産、1業種の不振、1か国だけの問題へ全額を置くよりは、損失の原因を減らせる。
相関は保証書ではなく、普段どう動いてきたかを見る履歴。下落時に変わる前提で、過去の数字だけでなく「景気後退が来たら何が一緒に売られるか」も考えたい。
自分の口座は「5つの理由」で棚卸しする
難しい相関計算をしなくても、まずは次の5つで分ければ偏りが見えてくる。
| 見る理由 | 聞いてみること | 自分の記入欄 |
|---|---|---|
| 景気 | 景気後退でまとめて利益が落ちるのはどれ? | |
| 金利 | 金利上昇・低下のどちらで弱くなる? | |
| 為替 | 円高と円安、どちらに偏っている? | |
| テーマ | AI、半導体、資源など同じ期待に乗っていない? | |
| 中身の重複 | 投資信託と個別株で同じ企業を何度も持っていない? |
たとえば半導体関連が資産の40%を占めているなら、銘柄が6社あっても「半導体40%」として先に見る。そのうえで6社へ分けたことによって、1社固有の事故は薄められていると考える。
円安で利益が増えやすい輸出株ばかりなら、業種が違っても為替の向きは同じ。国内株、米国株、全世界株を持っていても、上位企業や通貨の偏りを見れば思ったより似ていることもある。
偏っていたら、すぐ全部入れ替える?
偏りを見つけても、その日のうちに全部売る必要はありません。集中している理由が分かっていて、下落幅も受け入れているなら、意図して集中しているだけです。
困るのは、分散できていると思っていたのに実は一つのテーマへ集中していた時。相場が崩れてから気づくと「こんなに下がると思わなかった」になりやすい。
調整するなら、新しい入金先を別の値動きへ回す、増えすぎた部分だけ戻す、同じ中身の投資信託を一つにまとめる方法もある。売却だけが調整ではない。
年1回や、配分が自分で決めた幅を超えた時に見直すやり方もある。頻繁にいじるより「半導体は資産の何%まで」「一つの国は何%まで」と先に上限を決めた方が迷いにくい。
分散は、儲かる銘柄を増やす方法ではない
分散すると、どれか一つが急騰した時の恩恵は薄くなる。半導体株1社へ全額を入れて当たった人には、分散した口座は負ける。それは普通にある。
分散の目的は、一番上がる銘柄を当てることではありません。一つの予想が外れただけで、資産全体が立て直せなくなるのを避けるためにあります。
上がる時に少し物足りない。その代わり、外した時にも次を続けられる。分散はリターンを派手にする道具ではなく、退場しにくくする設計だと思った方が分かりやすい。
まとめ:銘柄数より「同じ理由」を数える
5銘柄持っていても、5社ともAI投資、半導体市況、ドル円で動くなら、口座は一つの大きな予想へ寄っているかも。投資信託も3本あるだけでは分からないので、中の企業や国が重なっていないかまで見ておきたいところです。
マーコウィッツの考え方は、難しい数式を使わなくても役に立つ。AとBを別々に見るのではなく、一緒に持った時にどう動くかを見る。それだけでも、分散の見え方は変わる。
口座を開いたら、銘柄数の横に「何が起きたら下がるか」を一言ずつ書いてみよう。同じ答えが並んだら、見た目より集中しているかもしれません。その集中を狙っているのか、気づかず作ったのか。まずはそこを分けてみればOKです。
※本記事は特定銘柄の購入推奨ではありません。紹介したデータや戦略は一つの強力な指標として参考にし、投資判断はご自身のリスク許容度に応じて行ってください。
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今回は、5銘柄持っていても、本当に分散できているとは限らないという話をしました。
銘柄数だけではなく、何の理由で上がり、何の理由で下がるのか。
ここを見ないと、見た目は分散でも、中身は一つのテーマへ集中していることがあります。
資金配分やポジションサイズの考え方はこちらでも整理しています。
関連記事:
ケリー基準による最適ポジションサイジング│一度のミスで退場しないための資金配分術
分散していても、危機時には普段と違う動きになることがあります。
通常時の標準偏差や相関だけでは見えにくいリスクについては、こちらの記事でもまとめています。
関連記事:
標準偏差と正規分布の限界。「ブラックスワン」を数学的にどう組み込むか
銘柄を増やしすぎると、分散ではなく「何を持っているのか分からない状態」になることもあります。
投資判断の回数や、管理できる銘柄数についてはこちらでも整理しています。
関連記事:
投資で疲れる人は、毎日判断しすぎている|迷いを減らす7つのルール
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